ただの水?!(※イメージ)
ただの水?!(※イメージ)

「水素が体にいいと……」

 今年3月の結婚会見で、片岡愛之助さん(44)が、妻の藤原紀香さん(44)に薦められたと口にした水素健康法。中でも夫妻のお気に入りは“水素浴”らしく、紀香さんのブログには友人の誕生日にプレゼントしたことや、「むくみがとれる」「お肌すべすべ」といった話題が目立つ。

 5月26、27日に開催された伊勢志摩サミットの会場でも伊藤園の水素水が提供されたことがツイッターで話題となった。

 水素水は、文字どおり水素ガスが水に溶けたものだ。ブームのきっかけは2007年、日本の水素水研究の第一人者とされる日本医科大学の太田成男教授が、水素の抗酸化作用を発見。世界的な科学雑誌「ネイチャーメディシン」に論文を発表したことに端を発する。シミやシワなどの老化や、がんや生活習慣病、アレルギーなど、さまざまな病気の原因になると考えられている活性酸素を、水素の抗酸化作用で還元するというこの論文を、メディアは大きく報じた。太田教授の発見以降、水素研究は急速に進み、07年から15年6月までに日本、中国、アメリカなどで321もの論文が発表されている。

 水素の抗酸化作用は、ビタミンCなど他の抗酸化物質と違い、「体に必要な活性酸素には反応せず、もっとも毒性の高い活性酸素を還元する」ところとされる(高齢者住宅フェアでの太田教授の発表から)。同氏の著書『水素水とサビない身体』(小学館)によると、活性酸素には遺伝子やタンパク質、脂質を酸化して破壊する「悪玉活性酸素」と、体に必要な成分である「善玉活性酸素」があり、水素水は悪玉活性酸素にのみ働き、善玉活性酸素には作用しないという。

 これが真実ならば、紀香さんが礼賛する「むくみがとれて、肌がすべすべ」どころの話ではない、万能薬となるのではないか。太田教授も同フェアで「水素水は、全ての臓器に作用し、悪い箇所を良い方向に改善し、副作用がない」と自信を見せる。

 こうした論文などを追い風に、水素を含むとする飲料水や浄水器を扱う業者は激増。実際、インターネットのショッピングサイトで「水素水」を検索すれば、関連商品がズラリ、百花繚乱の様相を呈している。

 一方で、問題がある商品が目立ってきているのも事実だ。

 国民生活センターは活性酸素の一種(ヒドロキシラジカル)を抑制する水を作ると謳った水生成装置2製品について商品テストを実施し、3月10日、その結果を公表した。2製品のホームページには、いずれも「水素水生成器」と明記され、活性酸素を抑制すると紹介されていた。同センターは今回のテストで、製品に水素が含まれているかは調査していないが、「飲用による効果を表した製品ではない」と結論づけた。

 水素水として販売されている商品の中には、消費者庁から3月9日に行政処分が下っているものもある。商品の効能について事実と異なる効能を告げて勧誘していたという。

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