調査報告書を発表した第三者委員会のメンバーによる記者会見(3月29日) (c)朝日新聞社
調査報告書を発表した第三者委員会のメンバーによる記者会見(3月29日) (c)朝日新聞社

 東証1部上場企業の王将フードサービス社長の大東(おおひがし)隆行氏(当時72歳)が京都市内で射殺された未解決事件が、大きな展開を見せている。同社は先月末、記者会見し、創業家とある人物の“不適切な取引”で170億円もの損害を出していたことを発表した。注目すべきは、報告書で「A氏」と匿名で記されている人物との“異常な関係”だ。

 89年2月に王将戎橋店で火事があり、店舗の上階に住んでいた物件所有者が死亡。王将は遺族から賠償を求められた。当初は交渉が順調に進んでいたが、途中から難航し、法廷闘争に持ち込まれた。最終的には、97年に王将側が約1億5千万円支払うことで和解。同時に、王将戎橋店の土地と建物を9億円で買い取ることになった。このときにA氏が交渉役を担い、王将は別途≪買収工作資金として1億円を支払う≫(報告書)ことになった。

 ちなみに、このカネは取締役会の承認を得ておらず、経費として計上したため、後に税務調査で「所得隠し」にあたると指摘された。

 王将とA氏の関係は次第に深まっていく。創業者の加藤朝雄氏が93年に死去したときには、当時社長だった望月邦彦氏(79)が葬儀委員を依頼した。

「Aさんは加藤社長にご恩があり、今度はご子息たちを『我が子のように世話したい』と言っていました」(望月氏)

 だが、王将とA氏との不透明な不動産取引は、94年に朝雄氏の長男の潔氏が社長に、次男の欣吾氏が専務に就任したころから急激に増えていく。

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