ブドウ本来の果実味とふくよかさが…
ブドウ本来の果実味とふくよかさが…

 フード&ワインジャーナリストの鹿取(かとり)みゆきさんが、日本ワインを紹介する。今回は、山梨県の「フジクレール 甲州シュール・リー 2014(白)」。

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 山梨県の甲府盆地にあるフジッコワイナリーは、甲州種を使ったワイン造りに力を入れてきた。そのひとつが「フジクレール甲州シュール・リー」だ。

 山梨県では、JA経由でブドウを購入するワイナリーも多い。けれど、この甲州ワインは、来歴や収穫時期、ブドウの状態など細部に目が届くよう、県内13軒の農家から直接仕入れたものを主に使う。栽培醸造の責任者である鷹野ひろ子さんは、9月に入ると毎週、全ての農家をまわって果実の糖や酸を測り、収穫日を決める。届いたブドウは翌朝、新鮮なうちに仕込まれる。

 鷹野さんがこのブドウに最も適しているワイン造りだと考えるのが「シュール・リー(澱の上)」という手法だ。発酵後のワインは、澱(おり)と寝かせることで深く微妙に変化し、馥郁(ふくいく)とした味わいに仕上がるという。

「ブドウ本来の果実味とふくよかさのバランスが甲州ワインの魅力です。味わいの変化を見逃さず、繊細な果実味を残すことを大切にしています」(鷹野さん)

(監修・文/鹿取みゆき)

週刊朝日 2015年12月4日号