「年をとって、一筆一筆書いてお出しするのがとても億劫になってしまったんですよね」(※イメージ)
「年をとって、一筆一筆書いてお出しするのがとても億劫になってしまったんですよね」(※イメージ)

 人間関係で悩むという人は少なくない。厚生労働省の国民生活基礎調査(2010年)によると、家族や、家族以外の人との人間関係で悩みやストレスを感じているという人は、50代以上の男女を平均すると約12%。女性のほうが男性より、ストレスを感じやすい傾向にある。

 ところが、物と違い、なかなかダウンサイジングには踏み切れないものだ。

「老前整理」を提唱している「くらしかる」代表の坂岡洋子氏はこう話す。

「定年などの節目には人間関係の棚卸し・片付けが必要です。第三の人生は長い。一体誰の人生か?と考え、豊かに気持ちよく暮らすために、数より質を重視し、自分がともに年を重ねていきたい人と付き合うべきです」

 実は、人間関係の整理は医学的にもメリットがあるのだ。精神科医の香山リカ氏はこう話す。

「他者へ配慮したり、望ましくないことを言われて傷ついたりすることでストレスがたまり、体調面に影響が出ることもあります。体力や抵抗力が落ちてくるシニアは特にその傾向が強い。ストレスのもととは、できるだけ距離を置くことが好ましいです」

 コストの面でも効果がある、と前出の坂岡氏は指摘する。

「人間関係には、お中元やお歳暮などの贈り物や、年賀状の送付など、お金もかかります。本当に必要かどうか確認して無駄を省けば、経済的です」

 この時期、いちばん頭を悩ませるのは年賀状。「あの人には、出すべきか、出さぬべきか……」と毎年苦悶しつつ、結局縁遠くなった人にも義理で出し続けている人も多いだろう。思い切って整理し、ダウンサイジングすることを決めたのが、都内に住む岩城文子さん(82)だ。

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