自宅の居間の押し入れの奥から箱を取り出し、数百枚はあるだろう年賀状の束を手に取った岩城さんは、ふーっとため息をついた。

「年をとって、一筆一筆書いてお出しするのがとても億劫になってしまったんですよね」

 17年前に、ジャーナリストだった夫をがんで亡くした岩城さん。夫の生前は、海外での取材に同行することも多く、夫の仕事仲間たちとも広く交友関係を持っていた。その知人も含め毎年100枚ほど年賀状を出していたが、今年は、思い切って整理しようと考えている。

「夫の仕事仲間は特に、お互いもう顔もわからなくなってしまっている方もいます。今度の年賀状には『これをもって、最後にさせていただきます。これまでのご交友に感謝いたします』と添えて、最後の挨拶とさせていただこうと思っているんです。元気でやっていますよ、という証拠に自分の顔写真も小さく入れて」(岩城さん)

 来年からは、浮いた時間やお金を、趣味の和服のリメイクや、親しい友人との交友、老人ホームでのボランティア活動に使いたいと笑顔で語った。

週刊朝日  2015年11月6日号より抜粋