精神科医の片田珠美氏は、Aの今の精神状態を、こう分析する。

「鍛えた体を見せるのは自己顕示欲の表れで、自己愛を満たしたいのだと思う。ナメクジの写真は、塩をかけると小さくなってしまうことに自分自身を重ね、『自分は弱い、悲鳴をあげているんだ』ということを知ってほしいのではないか。攻撃衝動を実際の行為に移すのを防ぐために、書かずにはいられない文章や絵が、気持ちの悪い作品になることがある」

 関東医療少年院で更生し、出所後は10年以上も沈黙を守っていたAが、なぜ、再び暴走し始めたのか。

 その鍵を握るのは、見城社長だ。Aは10年にBS放送の番組を見て、初めて見城社長を知る。番組内で見城社長は、異端者こそが優良なコンテンツをつくる、という自身の出版哲学を披露していて、Aは、その言葉に感化された。将来、手記を発表するときは<頼めるのはこの人以外にあり得ない>と感じたという。

 Aが見城社長に最初の手紙を出したのは、12年の冬。すべて手書きで、その内容は熱烈だった。

<闇に葬られた90年代最大の異端児を、日本少年犯罪史上最悪のモンスターを、他ならぬ「見城徹」の手で、歴史の表舞台に引きずり出してみたいとは思いませんか?(中略)あなたこそは“異端者のメシア”です>

 これに見城社長が返信したのは、翌13年1月17日。そこには、Aへの最大級の賛辞が送られていた。

<私のいただいた手紙の中でこれほど完璧な手紙はなかったような気がします>

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