「食べたことないご飯でも食べましょうかね。行ったことのない国の料理とか。一緒に住んでいるパンサー向井とジューシーズ児玉の後輩2人と食べることになるんですかね」

「火花」は文藝春秋発行の「文学界」2月号に掲載された。又吉さんが小説を書くようになったきっかけについて、武藤旬編集長はこんな秘話を明かしてくれた。

「最初にお願いしたのは5年ほど前。うちの女性編集者が、文学フリマという同人誌イベントに行ったら、又吉さんが一般客として来ていた。エッセーやライブを見て、この人なら書けると直感を持っていた彼女が、一緒にハンバーガー屋に行って『小説を書いていただけませんか。ついては雑誌を送りたい』と言ったら、いきなり自宅を教えてくれたそうです(笑)」

「火花」の前に、「別冊文藝春秋」で短編小説を2作書いたという。

「2本は習作みたいなもの。本格的なデビューが『火花』です。テーマとか大きな流れは最初から変わっていませんが、細かいところは編集者とある程度議論しながら進めていきました。まずは又吉さんの力ですし、女性編集者の手柄だと思います」(武藤編集長)

 文藝春秋は会見の翌朝、増刷を決め、発行部数は104万部になるという。

 イラストレーターの山藤章二氏も又吉さんの作品を評価する一人。「火花」を本誌の似顔絵塾欄で取り上げた。受賞についても「予想どおり」。ただ2作目については「1作目で充満したものを出し切ったように感じる。私は2作目以降に関しては何にも期待していません」。

 又吉さんは会見で「そろそろ書き始めたいんですけど、それがおもしろいもの書きたいので、必ず恥かいてもいいんで書こうと思ってます」と2作目に意欲満々。これまでお笑いの仕事の合間に書いてきたが、これからもお笑いがメインで、そういう姿勢を崩さないようにしたいという。

 ともあれ、しばらくは「芥川賞」ネタで笑わせてくれそうだ。

週刊朝日 2015年7月31日号