漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、ドラマ「天皇の料理番」(TBS系・日曜21:00~)に出演している黒木華の特徴をこう解説する。

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 ドラマ「天皇の料理番」で、主人公・秋山篤蔵(佐藤健)の妻・俊子を演じている黒木華。日本一の料理人を目指す夫の夢をかなえるために、心ならずも愛想尽かしをする場面がある。

「うちはもう、篤蔵さんの子なんて産みたくないって言ってるんです」

 以前、流産した俊子に「やや子、ほんなにつらかったんか……?」と、いささか鈍い篤蔵の発言。

「ほんなん、つらいに決まってるやないですか。どんなんやったか教えてあげましょうか? どんな思いやったんか教えてあげましょうか!?」

 愛想尽かしのための「嘘」と、こぼれ落ちる「本音」とが、モザイクのように入り乱れる。黒木華の女優力がほとばしる場面。

 思わず見てるこちらは「ガラスの仮面」の白目状態で「華……恐ろしい子!!」と、言わずにはいられない。

 
 そんな黒木華、似顔絵で描くとすごくシンプルです。ツルンとした顔に、目がテン。そうなんです、視聴者に白目をもたらす女優は、似顔絵にすると、おおむね非常にシンプル。

 例えば市原悦子。テン目で、あなたの家庭を見透かしている。「世界ふれあい街歩き」のナレーションを務めた時には、太陽輝く南国の街を、問答無用で「ぼうや~よいこだ、ねんねしな~」ムードにおとしいれ、視聴者白目。

 例えば大竹しのぶ。笑っていても笑ってなくても、小さく黒目がちな瞳。阿川佐和子の「サワコの朝」に出演した時のぶっちゃけ恋愛トーク。

「私と別れたほうが全然、野田(秀樹)さんもよかったし、(別れた後の方が)面白いし。さんまさんも、私と結婚してる時は……あんまり面白くなかった」

 それって、しのぶが何かいろいろ吸っちゃうってこと?と、恐怖の白目。

 例えば白石加代子の語る「百物語」シリーズ。テンのような目が、魔にとりつかれたようにカッと見開かれ、むしろ加代子が白目。

 目がテン女優たちは、シンプルな面立ちだからこそ、その仮面にあらゆる役を憑依させる。一見地味で穏やかな瞳が、ギラリと光を帯びた時、この世のものでない芝居の幕開けだ。

 最新の目がテン女優・黒木華も、「ガラスの仮面」の名場面、「こんなうめぇもの食ったことねぇ」と、泥まんじゅうをむさぼり食うシーンが絶対似合うはず。

週刊朝日 2015年7月10日号

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カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など。

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