林:名人と言われる方が先輩にいらっしゃるから、そういう中で踊ったりするのは大変ですよね。
尾上:そうですね。とにかく歌舞伎の基礎は日本舞踊ですから。所作にしても立ち回りにしても見得にしても。日本舞踊は歌舞伎役者にとって、何ものにも代えがたい心得でしょうね。
林:いろいろ挑戦してきたけど、やっぱり歌舞伎が一番という気持ちですか。
尾上:ええ。役者としての僕を育ててくれたのは歌舞伎ですから。舞台も映画も、結果的に歌舞伎への恩返しになればと思っています。かといって、歌舞伎以外のお仕事では歌舞伎役者っぽくやろうとは思ってないです。そのジャンルに応じた表現の仕方で、周りの俳優さんと遜色なくやりたいですし。歌舞伎の精神を持ちつつも、それを感じさせないような芝居をしたいですね。
林:今ふっと思ったけど、松也さんの光源氏、見てみたいな。
尾上:歌舞伎には不動の光源氏(編集部注:市川海老蔵)がいますからね(笑)。
林:でも、見てみたいですよ。
尾上:僕は夕顔をやったことがあるんです。海老蔵さんの光源氏で。
林:今日初めてお目にかかりましたけど、背が高くてびっくりしちゃった。だから現代劇をやってもカッコいいんですね。
尾上:いやいや。
※週刊朝日 2015年6月5日号より抜粋