前出の中間報告書は同月、安倍晋三首相に提出された。その席には同委員会で委員長を務める原田義昭衆院議員、衛藤征士郎衆院議員、中山泰秀外務副大臣ら計9人の国会議員が出席。

 同委員会によれば、安倍首相は「更なる活動強化をするように」とアドバイスをしたという。

 そして総務省でも昨年8月から、「NHK海外情報発信強化に関する検討会」が立ち上げられた。

 1月に作成された中間報告書の〈目指すべき方向性〉では「中韓によって間違った史実が反日工作として世界に喧伝されていることに対し日本がフェアにして有効な反論をできていないことに留意する必要がある」と指摘。

 国際放送の財源について、「国家戦略にも関わるところであり、国としても必要な支援を強化していく必要があるのではないか」とされている。

 原田委員長が言う。

「総務相が新藤義孝氏だった昨年から、私はどうしたら国益に沿った情報発信ができるのか、ずっと相談を続けてきました。総務省の中間報告には『やり過ぎると、宣伝のように見える』とも書かれていました。高市早苗総務相に『何もやっていない段階で、そのように書くのはおかしいでしょう』と言いました」

 元NHKプロデューサーで武蔵大学教授の永田浩三氏はこう言う。

「政府の本当の目的は、意向を汲まなければ国際業務を縮小させるという、NHKに対する脅しだと思います。たとえば、新型国際放送を創立したところで、放送法がある以上、政府の意向をそのまま伝えることは難しい。そもそも、現実味が感じられない話なんです。実は昔から国際放送は、政府にとってNHKへの揺さぶりの場として、狙われてきた歴史があります」

(本誌取材班=福田雄一、小泉耕平/今西憲之)

週刊朝日 2015年4月17日号より抜粋