本誌は先週、大阪府警の「特別捜査協力者」、いわゆるスパイとされ、今年5月に銃刀法違反の容疑で奈良県警に逮捕されたA被告の衝撃手記をスクープした。

「報道が出てから、大阪府警内部は相当ピリピリしていましたよ。刑事部長ら幹部の所に『週刊朝日』を片手に確認に来るメディアが詰めかけ、対応に追われていた」(大阪府警関係者)

 拳銃のスペシャリストであるA被告は今年2月、大阪市内のホテルで暴力団関係者による拳銃6丁と実弾の売買に立ち会った際、事前に大阪府警捜査4課のB刑事に情報提供した。

 だが、その現場に張り込んでいたB刑事は摘発に動かず、拳銃3丁はその後、転売され行方不明になった。A被告はB刑事から情報提供の見返りに計120万円の現金を受け取るなどしたが、蜜月は5月で終わる。残り3丁を自宅で所持していたA被告が奈良県警に突然、逮捕されたのだ。

「奈良地検はB刑事から事情を聴いた模様だ。A被告が捜査協力者だったことや6丁の取引現場にいたことは認めている。しかし、いかなる事情でも銃の所持は見逃せないと、A被告は起訴された」(奈良県警関係者)

 公判はまだ開かれていないが、A被告がこれまでの顛末を綴った大量のノートなどを本誌は入手した。

 A被告のノートの中には大阪府警の「違法行為」を暴露した記述も散見された。B刑事と同じく当時、A被告と頻繁に連絡を取り合っていた大阪府警浪速署刑事課長(当時)のC刑事が、捜査情報を漏洩していたというのである。

 A被告のノートによれば、2013年1月末、大阪府警に当時、逮捕されていたA被告の知人が、「A被告から覚せい剤を分けてもらった」と供述したことから、A被告の自宅がガサ(捜索)対象となったという。

<ガサ状が出て明日行くぞの前の晩でした。Cさんから電話が入り、夜の9時30分頃、マンションから3分もない公園に呼び出され、遠回しに「近々ガサが入るのでややこしい物があれば早急に処分しておく様に」と指示されたのです>(A被告のノートから)

 覚せい剤については身に覚えがなく、当時は拳銃も所持していなかったが、A被告の自宅には軍用ナイフが10本ほどあった。そのことをC刑事に告げると、こう諭されたという。

「そらアカンわ。事が事だけに移動してください。今夜中にやっとかな、いかれてしまいまっせ。悪いこと言わんからこっちの言うた通りにしてください」

 A被告はC刑事の忠告通りナイフを友人の家へ移動。翌日、捜索を待ったが、なかなか捜査員が来ないので、買い物に出ようと思い、C刑事に電話を入れたという。

「じっとしといて! 必ず行くからそのまま動かんと家ん中居て! 悪いようにはせんから!」と説得され、待っていると午後3時ごろ、浪速署の家宅捜索が入った。

A被告はこう記している。

<このガサ情報漏洩がめくれたら(発覚したら)Cさんはクビになります>

(ジャーナリスト・今西憲之+本誌・小泉耕平)

週刊朝日  2014年11月21日号より抜粋