日本だけでなく、世界各地に大きな被害を与える「エルニーニョ現象」。異常気象は株価にどのような影響を与えるのか。やはり厳しいのは、猛暑になると注目される銘柄だ。

「冷夏や長雨になると、夏物の商品が打撃を受けることは間違いない。ビール、清涼飲料水、アイスクリームのほか、水着などの夏物衣料の売り上げも落ち込むでしょう」(みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミスト)

 ビール業界では「気温が1度下がれば、大瓶(633ミリリットル)の販売量が1日100万本減る」と言われる。これは大げさではなく、03年の冷夏では、ビール・発泡酒の7月の出荷数量(課税ベース)は前年同月比で12%も減った。1日あたりで換算すると、大瓶約430万本に相当する。

 さらに、その影響は飲料業界だけにとどまらない。

「飲料業界は莫大な量の商品が動くので、売り上げが減ればアルミ業界の生産量も低調になり、運輸業も厳しくなる」(前出の村山氏)

 予測できない気候リスクに、早くも対策をはじめた企業もある。大手コンビニのローソンは、毎年8月中旬以降に発売するおでんを、前倒し投入する計画を立てている。冷やし麺などの夏場の定番商品についても、

「気温が下がったら、パスタなどに交換できるよう準備している」(広報担当)

 一方、異常気象に強い銘柄もある。準大手証券会社のアナリストは言う。

「天然魚の漁獲量が減って価格が上昇すると、値段が安定している養殖魚の人気が高まります。また、世界的な水不足がおきると、産業排水を無害化するシステムを持つ水処理技術関連企業の需要が高まるでしょう」

 同アナリストが注目するのは、タイ、ハマチの養殖を手がけるヨンキュウや、世界的に水処理事業を展開する栗田工業だ。また、気象情報の需要が高まりから、民間気象情報サービス大手、ウェザーニューズも推す。

 エルニーニョはスペイン語で「神の子」を意味する。今年の夏は、神様の気まぐれに振り回されそうだ。

週刊朝日  2014年7月11日号より抜粋