山本昌(やまもと・まさ)1965年、東京都生まれ。日大藤沢高から84年ドラフト5位で中日に入団し、31年目。先発投手として活躍を続ける。通算218勝164敗。188センチ、98キロ(撮影/門間新弥)
山本昌(やまもと・まさ)
1965年、東京都生まれ。日大藤沢高から84年ドラフト5位で中日に入団し、31年目。先発投手として活躍を続ける。通算218勝164敗。188センチ、98キロ(撮影/門間新弥)

 プロ野球31年目を迎えた中日の山本昌投手。最年長先発勝利、最年長完封勝利などの記録をすでに持つが、今季は、史上最年長の勝利投手の記録がかかっている。

そんな山本が、今年の抱負を語る。

*  *  *

 毎年そうですが、今季の目標は先発ローテーションに入って10勝することです。今年はキャンプ・オープン戦ともに順調で、新球ツーシームの習得にも力を入れています。体力が下がっている分、投球の幅を広げないと通用しないので、毎年、まだ何かできるんじゃないかと考えてやっています。球種だけでなくフォームもです。いつでも1軍でいい投球ができるように、状態を上げていきたいですね。

 今年勝てば1950年に作られた最年長勝利投手の記録を破るのですが、60年以上前の、移動ひとつとっても大変な中で作られた記録です。自分が挑むというのも何か申し訳ない気がしますが、そのときが来たら、ありがたく頑張らせてもらおうと思っています。

 8月で49歳になります。今年のドラフト1位の鈴木翔太投手は30歳年下で、ご両親は僕より年下(笑)。毎年のことなのでもう慣れましたよ。

 長く続けられる理由をよく聞かれるんですが、サプリメントを飲むとか特別なことはしていません。投げ終わった後にマッサージもしないし、アイシングもしません。ただ意識しているのは若いころと同じ量の練習をこなすこと。スピードは当然違いますけど、ダッシュ15本なら15本、20本なら20本と。昔と変わらない量をこなすことで、体を維持したり、整えているという感じです。

 中日には84年に入団しましたが、中学のころは補欠だったし甲子園にも出ていない。背が高いだけで通用するわけないと思っていました。学校の先生になりたかったので、3~4年頑張ってダメだったら大学に行こうかなあと。案の定、4年間活躍できませんでした。そんなとき、米球団のドジャースへの留学があり、そこで職員だった故・アイク生原さんと出会い、新球スクリューボールを習得することができました。

 帰国してすぐの88年8月の広島戦で、念願の初勝利を挙げました。リリーフでしたが、本当にうれしかったですね。今まででいちばん欲しいものが手に入った。これ以上にうれしいことはあるのかと。

 そんなスタートから218もの白星を積み重ねてこられたので、こんな幸せなプロ野球選手はいないだろうと思っています。

 決め球を手に入れ、自信がついたプロ10年目以降は、相手の主砲と真っ向勝負をするのが楽しかったですね。広島の江藤、金本、ヤクルトの池山や広沢、巨人の松井。マウンドに立っていてゾクゾクしました。

 今はそんな余裕ないですよ(笑)。目の前の一人を打ち取るのに必死です。

 これまでやめたいと思ったことはありません。ただ、やめなければいけないと思ったことは何回もある。プロは結果が全てですから。

 でも球団の厚意もあってここまでやらせてもらってきた。プロ野球史上、31年続けている選手はいません。きちんとした投球ができれば1軍の先発マウンドにも立てるし、最後まで全力で頑張りたいなと思っています。

 できれば優勝に貢献して、もう一回、日本シリーズで投げられたら最高ですね。

週刊朝日  2014年5月2日号