妊婦が禁忌とされたのは1982年。その理由を環境省に問い合わせると、「調べたが、わからない」としつつ、こう推察した。

「妊婦さんの体は一般の人に比べて脆弱(ぜいじゃく)。初期はつわりがあり、後期は出産間近。温泉に入ると長湯をしがちで、気をつけたほうがいいということだったのではないか」(環境省自然環境局自然環境整備担当参事官室)

 専門家からも疑問の声が上がっていた。岩永レディスクリニック院長の岩永成晃氏は、長年、妊婦の温泉利用の安全性を主張してきた。別府温泉にある同クリニックでは、入院中の妊婦に温泉を利用してもらっているが、問題が生じたことは一度もない。温泉地で生活する妊婦に問題が起こったという報告などもないそうだ。妊婦のなかには、温泉に入ることで子宮などへの細菌感染を不安視する声もあるが、それについても岩永氏は否定する。

「大勢の人が入浴することによる感染リスクは温泉に限ったことではなく、どの公共浴場でも同じこと。温泉浴そのものが感染の原因になることはないという学会報告があります」

 一方で、前出の前田氏は、こう注意を促す。

「どんな入り方をしても問題がないわけではない。体調が悪いときは入浴を控える、のぼせるまで入らない、汗をかいたら適度な水分補給をするなど、常識の範囲内で楽しんでほしい」

 今後は、温泉が妊婦の新たな「癒やしスポット」になるかもしれない。

(本誌取材班)

週刊朝日  2014年4月25日号

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