今年でデビュー3年目を迎える、Kis‐My‐Ft2の藤ヶ谷太輔さん。アイドルとしてのみならず、その演技力も高く評価されており、ドラマや映画では、ヒーローや若手のクリエーターなど、さまざまな役を演じてきた。5月11日より開演する舞台「コルトガバメンツ」では、引きこもりの役に挑戦する。

「お前は、これ以上、上手になるな」

 5年前、ジャニーズの伝統の舞台「PLAYZONE2009―太陽からの手紙―」の稽古で、演出を担当した錦織(一清)さんからそう言われたことが、強く印象に残っているという。

「他の出演者は、『そこは止まってから台詞を言って』とか、『もっとゆっくり』とか、いろんな指導を受けていたんです。でも、僕の場合は、『見放されてるのかな?』と思うほど、何も言われなくて……。あるとき、勇気を振り絞って聞いてみたんです。『僕、錦さんから何も言われないんですけど、何か気になっていることとかあったら、言ってください』って。そうしたら、『これ以上、上手になるな』ってぼそっと……。どういう意味なんだろう、ってそのあとすごくいろいろ考えました」

 アイドルグループKis‐My‐Ft2としてデビューしたのがその2年後。このときの舞台が、事務所の社長であるジャニー喜多川さんに、彼らのデビューを決意させるきっかけになったとされている。10代の頃は、ジャニーズJr.として、先輩のバックで踊りながら、デビューを夢見ていた。

「当時は、どちらかというと、芝居には興味がないほうでした。でも、ちょうど20歳になって、『滝沢演舞城』で弁慶の役をやらせてもらったときに、義経を演じるタッキー(滝沢秀明)との別れが、現実ではないのに、本当に悲しくてつらく感じられて……。初めて、役の気持ちに自分を置き換えることができたんです。そのとき、もっとお芝居をやりたいなと思いました」

週刊朝日  2014年4月18日号