満足いくピッチングができない中で、とても1軍のマウンドに上がることは考えられなかったという。

「あそこに立てれば新しい景色が見えるんかなあ、という思いはあったんですけどね。プロ7年目に6日間だけ1軍に登録されました。あのときは『投げたいけど、投げたくない』という複雑な気持ちでした」

 つらい8年間の中で最高の思い出は、高校時代のチームメートとのものだ。プロ4年目に出場した「フレッシュオールスター」で、大阪桐蔭の同級生だった平田良介(中日)、2学年下の中田翔日本ハム)と再会した。

「試合後に一緒にメシに行きました。『みんな変わってへんなあ』と思いましたね。唯一変わっていたことと言えば、中田も平田も僕も、みんなデブになっていたことぐらいですかね(笑)。自分の中ではプロ野球はすでに終わったこと。つらかったことを思い出すというより、『いい経験をさせてもらって幸せやったなあ』と思ってます」

 4月11日に指導者1年目のシーズンが幕を開ける。いま辻内は強く思っている。「ここでの道を究めて、いい指導者になりたい」と。

「女子プロ野球は今年で5年目なんです。もっと人気を高めていきたいですね。ウチは専用の練習場がないし、練習後の選手は球団の事務所で働きます。環境的にはまだまだですけど、個々の選手のレベルは、すごい高いんです。女子プロ野球の最速ピッチャーで126キロですけど、指導次第では、130キロを投げられるピッチャーも出てくるはずです」

週刊朝日  2014年4月4日号