緊迫した情勢が続くウクライナ。作家の室井佑月氏は、「もしも」のときの日本のとるべき立ち位置について考えた。

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 ロシアはウクライナ・クリミア半島での軍事作戦の実施を決めたらしい。

 プーチン大統領は、「ロシア国民やクリミア自治共和国に駐留するロシア軍人の生命が脅かされる」からそうするのであり、武力行使は、「ウクライナの社会、政治情勢が正常化するまで」といっている。

 なんでそうなる?

 ニュース解説メディア「The New Classic」にわかりやすく書かれていた。

「ロシア側の狙いは、ウクライナ政権がEUへの接近を測っていることに対して、ロシアの黒海艦隊が駐留しているクリミア半島を自国の影響下に置くことにある」(原文ママ)と。

 なんでも、「もともとクリミア半島は『親ロシア対親EU』という構図だけでは説明することが難しい複雑な背景を持っており、この地域の情勢悪化が懸念されていた」んだって。

 そして、アメリカやEU諸国は、ロシアの動きをけしからんといっている。オバマ大統領は2月28日、

「ウクライナへのいかなる軍事介入に対し、アメリカは国際社会と協力し代償を払わせる」

 という声明を出した。ロシアによる軍事介入が確認され次第、6月にソチで予定されているG8サミットへの出席を拒否する方針らしい。そして、3月2日の「YOMIURI ONLINE」によれば、この国の小野寺防衛相は、視察先の長崎県佐世保市内で記者団に、

「緊迫した情勢にあると認識している。ウクライナで問題が起きると、世界の懸念が増える。話し合いで決着し、安定することが、日本の安全保障にもつながる」

 と語ったという。だよね。それがいちばん。この国の意志として、ぜひ今後もそういいつづけて欲しい。

 ところで、仮に、の話であるが、ロシアも引かずアメリカも引かずとなったら、黒海北側に位置するウクライナ南部の人口わずか255万人のクリミアから、大きな戦争が始まったりするんだろうか。

 でもって、日本が集団的自衛権を行使できているならば、他国から攻撃を受けた同盟国に要求されれば、クリミアまで戦いにいかねばならないのだろうか。

 けれど、「『親ロシア対親EU』という構図だけでは説明することが難しい複雑な背景」なのである。

 だとすれば、自衛隊を派遣するとして、国民が納得するような説明はできるのか。

 何度も何度も考えてみたが集団的自衛権とは、アメリカにいわれて日本人が海外まで戦争しにいけるようにすることじゃないのか。

 もし、集団的自衛権が行使されるようになっても、日本は、「話し合いで決着し、安定することが大事。それが日本の安全保障にもつながる」などといっていられるのかしら。

 あたしはこの国がそういう位置にいられるようにしておくことこそ、大事なんじゃないかと思う。

※週刊朝日 2014年3月28日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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