室井佑月「撤回するならはじめからすんなやっ」と怒り心頭 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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室井佑月「撤回するならはじめからすんなやっ」と怒り心頭

連載「しがみつく女」

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 作家の室井佑月氏は、安倍首相の靖国神社参拝以降、歴史認識について発言する人が増えていることを指摘する。

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 2月21日付の東京新聞の朝刊によれば、松江市につづき東京都の教育現場においても、「旧日本軍の残虐行為を捏造している」として、『はだしのゲン』の学校図書館などからの撤去請願が出されているそうだ。

『はだしのゲン』は原爆投下後の広島を描いた漫画だ。「誤った歴史が事実かのように描かれている」という区会議員と、「原爆や戦争の悲惨さを伝えている(から良い)」とする区会議員と、意見が対立しもう半年になるんだって。

 去年末の安倍総理の靖国神社参拝以降、歴史認識について発言したがる人は増えている。

 衛藤補佐官はユーチューブに投稿した国政報告で、安倍首相の靖国参拝後に失望声明を発表した米国を、「むしろわれわれのほうが失望だ」と批判した。本田内閣官房参与は靖国参拝を称賛。都知事選では田母神候補、応援に入った石原議員や首相のお友達の作家、百田さんなどが好き放題にしゃべっていた。

 衛藤補佐官はその後、菅官房長官の要請もあって、発言を撤回、動画も削除した。叱られて撤回するぐらいの覚悟なら、はじめからすんなやっ。

 学校図書館などから『はだしのゲン』を撤去したい区会議員や、首相のまわりの話したがり屋さんたちは、なぜ国内で自分の主張をする? 海外も絡んでくる話なんだから、海外で話して来なよ。もちろん、身分を隠してな。この国代表で行かれても困る。

 歴史認識についてあたしがいちばん納得したのは、橋下徹さんが維新の会の第2回党大会で述べた話だったかもしれない。

 橋下さんはたしかこういった。

「自衛戦争だと今いい張っても、世界からの評価を覆すことは出来ません。自衛か、侵略か、アジアの独立に寄与したか、立場が違えば見方も違う。そんなことをいちいち今議論しても仕方ない。(この国は)サンフランシスコ講和条約、東京裁判で平和に対する罪を認めた。それが前提となっている。国家を運営する責任者として、もしそれを否定するなら、条約を破棄しますかという話になる」

 いちいち頷いた(共同代表は嫌いなのだが)。歴史認識について話したがる方々は、サンフランシスコ講和条約をぶち壊す覚悟はあるのか?

 もっと過激な発言をしている人がいるのに、彼の発言だけが悪い風に取り上げられる。

 そうそう、元外務省の佐藤優氏によれば、「実証性や客観性を軽んじ、自分が理解したいように世界を理解する態度」を「反知性主義」というらしい。

 19日付の朝日新聞に「『反知性主義』への警鐘」という記事が載っていた。この頃、政治的な問題発言が続出する現状の分析・批判に、評論や論壇で「反知性主義」という言葉が使われているんだとか。

 非知性じゃない、反知性。自分ワールドに酔って、ただ意見をごり押しするアホって解釈でよろしいか?

週刊朝日  2014年3月14日号


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室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中。

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