高まる批判報道に当選後「週刊誌が売れるため」と反論したことも (c)朝日新聞社 @@写禁
高まる批判報道に当選後「週刊誌が売れるため」と反論したことも (c)朝日新聞社 @@写禁

 ワタミ=ブラック企業のイメージは2013年も強まる一方だった。弁護士など専門家が選考に関わる「ブラック企業大賞」で大賞を獲得。そんな中、創業者の渡邉美樹氏(54)は7月の参院選で自民党から出馬し、初当選を果たした。

 そもそもブラック企業は、どう定義されているのか。『ブラック企業ビジネス』(朝日新書)の著者である今野晴貴氏が解説する。

「『若手社員を使い捨てにする会社』です。労働基準法に違反する会社とブラック企業であるかどうかは、ある意味では別なのです」

 残業などの労働環境が厳しく、給与水準が低くとも、会社が社員を育てようと努力すれば該当しない可能性が出てくる。逆に労基法に抵触しなくとも、新人社員を数年で退職に追い込む会社は立派なブラック企業だ。

 ワタミの3年内離職率は12年度で42.8%。目安とされる30%を大きく上回るが、厚生労働省の「宿泊業・飲食サービス業平均」の48.5%は下回る。渡邉氏が「ブラック企業ではない」と反論する根拠だ。だが、「飲食業界を担う人材として社員を育てているか、4割はふるい落としても構わないと思っているのか。疑問に感じる人も少なくないでしょう」(今野氏)。

 そんな「民意」は、渡邉氏に届いたのだろうか。初当選後、記者団の前で「想像以上の逆風だった」とため息。しかし続けて「(国会議員)『1年生は何でもやります』と言うのが私の会社でも正しい回答だ。子どもたちが夢を語れる国にしたい」と力説した。女性社員(当時26)が入社2カ月目に自殺した問題ではインタビューで「会社をあげて命がけの反省をしている」と答えたが、「自殺問題に『命がけ』の表現を使ったことに違和感を覚えた」(労働問題関係者)といった疑問の声も強い。女性社員の遺族は12月、約1億5千万円の損害賠償を求める民事訴訟を提訴した。

「13年は政官財界がブラック企業の問題点に気づいた年」(今野氏)

 厚労省は9月、違法な残業や、離職率が極端に高い企業の集中調査を実施。対象の8割超の4189事業所で労働法令違反が見つかっている。この中にワタミが含まれているかは公表されていないが、「ブラック企業大賞」の冠のもと、渡邉氏にも、さらに厳しい一年が待ち構えているのは間違いないだろう。

週刊朝日 2014年1月3・10日号