あぶらたっぷりの食べ物は魅惑的だが、当然、摂りすぎは禁物。なかでも近年、ファストフードやお菓子に多く含まれる「トランス脂肪酸」を敬遠する動きが、世界的に強まっている。

 トランス脂肪酸を含む硬化油は、なぜこれほど多用されるようになったのか。順天堂大学大学院の白澤卓二教授(加齢制御医学)は、経緯をこう話す。

「飽和脂肪酸の多い動物性脂肪は、悪玉コレステロールを増加させるとして、避けるように言われてきました。そこで、悪玉コレステロールを低下させる植物性の不飽和脂肪酸をもとに、動物性脂肪の代用品として硬化油が作られ、奨励されたのです。硬化油を使った製品は長持ちするうえ、動物性油脂より安価に作れます。揚げ物として使用すると、からっとした食感が得られることもあり、爆発的に普及しました」

 ところが、うまい話には裏があった。1990年代後半ごろになって、トランス脂肪酸の過剰摂取による健康への影響が明らかになってきたのだ。

「2002年の全米科学アカデミー報告で、トランス脂肪酸摂取量と悪玉コレステロールの増加に直接的な関連性が証明されました。動脈硬化の危険因子であるだけでなく、肥満やアレルギー疾患、認知症のリスクを高めるとの研究結果もあります。一方で、トランス脂肪酸を摂るメリットは発見されていません」(同)

 日本でも、トランス脂肪酸は“狂った油”“食べるプラスチック”などと揶揄(やゆ)されてきた。

 洋食に比べ、和食は“ヘルシー”だといわれているが、日本人は実際のところ、どれくらいのトランス脂肪酸を摂取しているのか。内閣府の食品安全委員会事務局は、次のように話す。

「世界保健機関(WHO)のリポートは、トランス脂肪酸の摂取量を全カロリーの1%未満に抑えるよう勧告しています。FDA(米国の食品医薬品局)によると、米国人は03年に1日当たり平均4.6グラム摂取していましたが、12年には約1グラムまで減らしました。日本人はというと、03~07年の平均で0.7グラム、全カロリーの0.3%です。通常の食生活なら、健康への影響は小さいと考えられています」

※週刊朝日 2013年12月13日号