小泉元首相が「脱原発宣言」 最後の政争を仕掛けた? 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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小泉元首相が「脱原発宣言」 最後の政争を仕掛けた?

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週刊朝日#原発
小泉親子がまさかの“脱原発タッグ”を組む日は来るのか (c)朝日新聞社 

小泉親子がまさかの“脱原発タッグ”を組む日は来るのか (c)朝日新聞社 

小泉元首相に「脱原発」を確信させたという、フィンランドの最終処分場「オンカロ」 (c)朝日新聞社 

小泉元首相に「脱原発」を確信させたという、フィンランドの最終処分場「オンカロ」 (c)朝日新聞社 

 長い沈黙を経て、久々にあの男が「旋風」を巻き起こすのか――。小泉純一郎元首相が講演会で、「原発ゼロ」を熱く、高らかに訴えたのだ。

 IOC総会で汚染水問題について「コントロールされている」と語った安倍晋三首相にクギを刺すかのように、このように語っている。

「汚染水なんていうのは、どこから漏れてるのか、海は大丈夫なのか、はっきりした結論が出てない。つい最近、安倍総理が汚染水視察に行きましたよね。ヘルメットして、顔面にマスクをして、全身防護服で。約3千人の作業員も防護服姿で汚染水処理にあたっています。一日の作業が終わったら、その服は全部、捨てなきゃいけない。それらは焼けない。また放射能が出てしまうから。そして未だどこまでの地域に入れるのか、どこまで安全なのか人体だけじゃない。生物、農作物、海産物。被害がわかりません」(小泉氏)

 小泉氏が語ったところによれば、脱原発を志すようになったのは、NHKが原発事故後に放送した海外制作のドキュメンタリー「地下深く永遠に~100,000年後の安全~」を見たのがきっかけだったという。同番組は、フィンランド南西部の島で建設が進む世界初の使用済み核燃料の最終処分場「オンカロ」がテーマ。「オンカロ」はフィンランド語で「洞窟」の意で、文字どおり、地下400メートルに掘られた空間に、核のゴミを埋め、10万年以上にわたって封印する施設だ。この番組をきっかけに原子力の勉強を始めたという小泉氏は今年8月中旬、三菱重工業、東芝、日立製作所など原発メーカーの幹部らと一緒に「オンカロ」を視察。このとき、脱原発を確信したというのだ。

「原発に投入したカネを、それぐらいの額を自然を資源にするさまざまなエネルギーにこれから向けていく。私は日本国民なら必ずできると思う。そういう大きな転機がこの大震災でやってきたと捉えたほうがいいと思うんです」(小泉氏)

 それにしても、これまで表立った発言を避けてきた小泉氏が、なぜ今、「脱原発」を声高に唱え始めたのか。原発推進に舵を切りつつある安倍政権と真っ向から対立するせいか、小泉氏が顧問を務める国際公共政策研究センターに問い合わせても物々しい対応だった。

「この件に関しては、一切ノーコメントとさせていただいております」

 環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏は、こう推測する。

「首相時代の小泉氏を見る限り、エネルギー政策には興味を持っておらず、経産省まかせにしていた印象です。ただ、勘の鋭い人ですから、福島第一原発の事故を経験して考えが変わったのかもしれません」

 飯田氏が指摘するのは慶大生時代の小泉氏を教え、小泉政権では内閣府顧問として構造改革のブレーンとなった経済学者の加藤寛氏(今年1月に86歳で死去)の影響だ。

 加藤氏は遺作となった3月発行の著書『日本再生最終勧告 原発即時ゼロで未来を拓く』(ビジネス社)の中で、あるエピソードを披露している。震災直後の11年5月、加藤氏、小泉氏、竹中平蔵氏の3人が集まって都内でセミナーを開いた。表舞台を避けてきた小泉氏が、加藤氏の依頼に「最初で最後」と応じたものだという。この会で、小泉氏はこう語っている。

〈今後は原発への依存度を下げるべきだ。代わりに風力、太陽光、地熱などの自然エネルギーを促進すること。そうすれば地球環境問題にも貢献でき、エネルギー分野に新たな技術も生まれるはずである〉

 つまり震災2カ月後には、すでに脱原発に目覚めていたのである。このセミナーで、加藤氏も脱原発を明言して小泉氏を援護射撃。日本の電力の歴史をひもといて「原発即時ゼロ」を訴える遺作の帯では、〈小泉純一郎氏 竹中平蔵氏 推薦!〉と、小泉氏は盟友の竹中氏と共に名を連ねている。

 一方、引退したとはいえ政治家である以上、「永田町の論理」も存在するはずだ。政治評論家の浅川博忠氏は、こんな可能性を指摘する。

「小泉氏の発言は、原発を推進する安倍首相に対して向けられた警告のメッセージです。首相時代に安倍氏を幹事長や官房長官に抜擢した小泉氏からしたら、『誰のおかげで首相になれたんだ』という感覚でしょうから。かつて郵政民営化を叫んだときと同じで、今後は原子力というワンテーマに集中して発言を続け、国政への影響力を維持していく狙いがあるのでしょう」

週刊朝日 2013年10月11日号


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