中高一貫校の人気が高い。主な理由は国公立大や医学部など、難関大学への進学率の高さだ。そんな中高一貫校の中から、今、急成長を遂げている学校に注目した。

 偏差値51以上の「関東上位校」からみてみると、まず挙げたいのは、渋谷教育学園幕張(千葉)だ。2007年偏差値は63で、男子御三家の武蔵(東京)や女子御三家の雙葉(東京)と並ぶが、東大の現役合格者数は41人と群を抜く。「難関大+医学部現役合格率」も27.1%と高い。1983年創設で、まだ新しいが、東大合格者数では県立千葉を02年に抜き、05年以来、千葉トップの座を譲っていない。13年度は、過去最多の東大合格者数61人を記録した(浪人含む)。急成長の中高一貫校だ。田村哲夫校長は、好調の要因をこう語る。

「30年前、新しい学校をつくる際に教育目標を立てました。『自調自考』『高い倫理観』『国際人であれ』の三つです。その教育目標を掲げ、地道に活動してきたことが花開いたのではないでしょうか」

 教育目標の一つ、自分で調べて自分で考えるという「自調自考」は、同校の柱だ。それを象徴するのが開校以来、「チャイムがない」ということ。生徒自ら考えて行動すればいい、チャイムで縛ることはないとの方針からだ。

「自調自考論文」を書くのも独特の行事だ。高1で自分でテーマを決め、取材・調査を重ね、高2の夏休みで論文を完成させる。テーマは自由で、英語で書いてもいいし、詞や曲などの創作活動も可だ。その後、教員たちで優秀な論文を選び、文集にまとめる。

 同校では生徒の自由に任せ、自主性を尊重するが、それに必要な条件が、二つ目の教育目標「高い倫理観」をもつことだという。

「自由や自主性は大事だが、それには、条件があります。嘘をつかない。騙(だま)さない。真面目に努力する。そういう考えをもった人は自由に行動していい。高い倫理観をもつことは非常に大事なことです」(田村校長)

 人として何が正しいのか、善なのかを判断する心の教育も同校では行っている。その一つが、校長講話だ。生徒の成長段階に合わせ、学年ごとに「自我の目覚め」(中2)、「自由とは」(高2)といったテーマがあり、それに沿って校長が話す。学期ごとに2回、6年間で約40時間。この講話を通し、最も多感な時期といえる6年間で生徒はものすごく変わるという。

週刊朝日 2013年8月30日号