老後の生活の柱になるのはやはり、公的年金だ。しかし、「60歳になったら悠々自適の年金生活」と考えているとしたら、それはもはや幻想かもしれない。年金を取り巻く環境は厳しくなるばかりだ。だが、実は公的年金の額を自分で大幅に増やす方法がある。

 年金を受け取る時期を遅らせる代わりに、その額を増やせる「繰り下げ受給」だ。本来65歳から始まる受給を先送りすることで、繰り下げ1カ月あたり0.7%増額できるしくみだ。最大5 年の繰り下げが可能で、70 歳からの受給であれば42%も増額された年金を受け取ることができる。たとえば国民年金 (老齢基礎年金)を5年間繰り下げた場合、本来なら満額で年約78万6500円だった支給額が約111万6800円になる(2013年度)。約33万円も増額した年金を、生涯受け取り続けることができるのだ。

 

「最低1年は繰り下げる必要がありますが、その後は1カ月単位で自由に繰り下げ期間を設定できます。もらい始めが遅いので長生きしないとトクになりませんが、60歳時点の平均余命(男性82.93歳、女性88.33歳)まで生きるなら受給総額は増えます」(社会保険労務士の冨樫晶子氏)

 繰り下げ期間に、一円も年金が受けられないのが不安という人なら、国民年金だけを繰り下げて厚生年金は通常どおり受け取ったり、夫婦のどちらか一方だけ繰り下げたりする方法も可能だという。

 また、厚生年金は70歳まで加入できるので、長く働けばその後の年金額にもプラスに働く。老後に受け取る老齢厚生年金は加入期間と報酬額から計算されるからだ。働き続ければ年金保険料の負担はあるものの、その分将来の年金受給額は増える。

週刊朝日  2013年8月16・23日号