同じ布団で唇を重ねるだけで幸せ 74歳女性の恋愛 (2/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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同じ布団で唇を重ねるだけで幸せ 74歳女性の恋愛

週刊朝日#男と女
美雪さんを初めて旅行に誘ったときの和雄さんの手紙。冬の蔵王とあって防寒対策に細かく触れている(撮影/大嶋千尋)

美雪さんを初めて旅行に誘ったときの和雄さんの手紙。冬の蔵王とあって防寒対策に細かく触れている(撮影/大嶋千尋)


《今度、梅を見に行きませんか?》《亡き人への追憶は追憶として、前向きに生きていきましょう》

 あなたの美しきが忘れられないとつづられ、交際を申し込まれた。達筆の文面ににじむ優しさと誠実さに、どんどん惹かれていく。食事やコンサートに出かけるようになって、2年が経つころ、「樹氷を見に蔵王へ」と誘われた。

 美雪さんは100歳近い義母と二人で暮らす。それが、和雄さんを受け入れられない最大の理由だった。でも、介護だけの日々は苦しい。この恋をあきらめたら、いつか義母を恨んでしまう。「私は意地悪な嫁になりたくない」。美雪さんは交際に踏み切った。

 和雄さんは退職を機に、美雪さんの住む町に引っ越してきた。一緒に過ごす時間が増え、優しく抱き寄せられ、そのたびに愛されていると感じ、胸が高鳴った。心配した義母の反応は意外に好意的で、和雄さんが遊びに来ると食卓が華やぐと喜んだ。和雄さんも義母の誕生日には花を贈り、ドライブに連れ出した。狭い町で二人の交際はすぐに知れ渡り、近所の噂になった。長年の親友は「亡きご主人の顔に泥を塗るのか!」と非難して立ち去った。それでも美雪さんは後ろめたくなかった。

 22歳で結婚後、大家族の家事一切を任され、幼い義妹弟たちの母親代わりをし、夫の会社の経理事務を担った。いまも義母の世話に明け暮れる。仕事一筋だった夫は家庭を顧みず、「65歳になったら二人でのんびりしよう」と言いながら63歳で逝った。恋した男性との穏やかで幸せな時間を、やっと手に入れた。「亡き夫からの贈り物」とさえ思えた。


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