「世界遺産」候補は何でもあり? 「海女」を押す動きも 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「世界遺産」候補は何でもあり? 「海女」を押す動きも

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いま話題の海女 (c)朝日新聞社 

いま話題の海女 (c)朝日新聞社 

 今後、世界遺産の登録が期待される候補のなかには、「一発逆転びっくり候補」がいる。まずは、すでに暫定リスト入りしている有力組から紹介してみよう。

 長州の吉田松陰が高杉晋作らを教えた私塾「松下村塾」(山口県萩市)。薩摩の名君・島津斉彬がつくった工場群「旧集成館」(鹿児島市)。坂本龍馬も出入りした「旧グラバー邸」(長崎市)。「三池炭鉱」(福岡県大牟田市、熊本県荒尾市)に「軍艦島」(長崎市)に「八幡製鉄所」(北九州市)。まるで「なんでもあり」の感じだが、実はこれらすベてが世界遺産候補の一群として、すでに暫定リストに入っているのだ。

 異色なのが、「九州・山口の近代化産業遺産群」。幕末から明治にかけて日本の近代化を担った「産業遺産」で構成されているという。なぜか、この遺産群のみ内閣府が担当している。「通常、文化庁が担当しますが、候補には八幡製鉄所など稼働中のものもあり、担当も経済産業省などさまざま。特別に内閣府がとりまとめるということで昨年5月に閣議決定しました」。

 すでに調査は進み、内閣府は今年にもユネスコに推薦する見通しだという。実は、文化庁にも「ぜひ今年」という有力候補がある。隠れキリシタンの信仰を物語る「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」だ。

 2014年登録分から各国がユネスコに推薦できる文化遺産はひとつだけだ。となると九州勢同士の一騎打ちだ。「競合した場合は関係閣僚同士の話し合いで決めることになっている」(内閣府)。

 つまり政治家間の話し合いになるのだが、安倍晋三首相は山口選出、麻生太郎副首相は福岡選出。なんとなく「隠れキリシタン」より近代化産業遺産群に分がありそうな気もするが、勝敗はこの秋、決することになる。

 暫定リストにあるうち未推薦は現在8件。一年一件ずつ減っても、当面追加募集はなさそうだが、将来のリスト入りを目指し活動している候補も少なくない。

 そのひとつが岡本太郎作の大阪万博のシンボル「太陽の塔」。運動に取り組む山口克也吹田市議は話す。「大阪万博は、それまで科学技術重視だった万博の中で、『人類の進歩と調和』というテーマを打ち出した、アジアで初の万博です。そのシンボルであり、芸術的価値もある太陽の塔は、世界遺産にふさわしい」。まずは、政府が創設を検討している「日本遺産」を目指し、いずれは世界遺産にともくろむ。ただ、「太陽の塔が世界遺産? 初めて聞きました」(文化庁)という声も。

 文化遺産より一段と審査が厳しい自然遺産を目指す動きもある。そのひとつが「鳴門のうずしお」だ。淡路島の兵庫県南あわじ市など3市は昨秋、世界遺産を目指す推進協議会をつくり、対岸の徳島県鳴門市にも協力を呼びかけるという。「顕著な自然現象に当たると思います。富士山登録で、改めてこちらも盛り上がるかもしれません」(南あわじ市の推進室)。

 さて、文化財や自然環境を保護する世界遺産とは別に、ユネスコには伝統芸能や慣習を保護する「無形文化遺産」という「遺産」もある。すでに能楽や歌舞伎、雅楽などが登録されているが、最近持ち上がったのが今話題の「海女(あま)」を押す動きである。

 全国最多の千人近い海女がいる三重県にある海女振興協議会の石原義剛会長はこう語る。「女性が行う海女漁の技術は、長い歴史を持つ一般庶民の生業です。それに、自然と共生する生き方が素晴らしい。世界遺産に十分値します」。石原さんによると、海女は世界でも日本と韓国にしかいないそうだ。無形文化遺産を目指し、韓国との連携も考えているという。

 岐阜市の代表的な観光で、1300年以上の歴史を持つ長良川鵜飼(うかい)も、無形文化遺産登録を狙う。ただ、市民の盛り上がりは、いまひとつなのだとか。「後継者不足の鵜飼を文化資源として保存継承していかなければいけないということで、無形文化遺産を目指す事業を始めました。市が『鵜飼を世界遺産に』ということで地域が一体化して活性化もできれば。ただ、鵜飼が文化遺産?という市民も多いのも現実で」(岐阜市役所担当者)。

「一発逆転びっくり候補」たちに、文化庁の榎本剛・記念物課課長はこんなエールを送る。「世界遺産も大事ですが、それをきっかけに地域の文化を大事にする機運が広がることが何よりです」。

週刊朝日 2013年6月28日号


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