作家の室井佑月氏が福島第一原発の問題から憲法改正の話に言及した。

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 5月3日付の朝日新聞「プロメテウスの罠」を読んで、あたしはびっくらこいてしまったよ。

 原発役人だった人々が退職金1千万くらい多くもらって辞めて、その後、大手企業に天下りして顧問などに収まっているんだね。マスコミが更迭だと報じた人々のその後だよ。 更迭じゃなくて、栄転じゃん。こんなことがまかり通っていいんだろうか。

 歌手の矢沢永吉さんが、「原発関係者全員、誰もケツ拭かない国に、明日があると思いますか」といっていたが、ほんとだよ。それが多くの国民の声だろう。

 次の参議院選では憲法改正が争点になるといわれているけど、自民党の改憲案だと、やたらと国の力が強くなる印象(他国に対してじゃない、自国民に対して)。いいの? この流れで。

 今でさえ、国の関係者の力は強いのに(失敗のケツ拭かないうえに栄転だもんな)、もっと強くしてどうするんだ。やっぱ、今以上に強くしておかないと、ヤバいことがたくさんあるから? 原発関係とかさ。

 中部大の武田邦彦さんのブログに、「汚染水が増えるのはおかしい」というようなことが書かれていた。冷却水は循環できているはずじゃない? 未だに増えつづける汚染水に困っているのはどういうことなの? ほんとうのことが知りたい。

それから、ちょっと前の東京新聞に、「被ばく 生態系に異常 次世代への調査必要 サルの白血球数減少」という見出しの記事が載っていた。原発事故の起こった福島の周辺では、蝶の奇形やサルの白血球数減少といった異常が起きているそうだ。

 記事には、「もちろん、それがそのまま人間に当てはまるわけではない」と書かれていた。「しかし、生態系は人間の生活と不可分。調査から得られるデータを無視するわけにはいかない」とも。当然だろう。

 どうして、みんなは騒がないの? サルだよ、人間に近いサルの異常がわかったんだよ。マスコミはもっとヒステリー気味になって、国をせっついていいはずだ。

 まあ、「サルは野山に生えてるものを自由に食ってるからね」、そういう人もいる。が、人間だって、ある程度しか防ぎようがないのが現状じゃん。

 たしか日刊ゲンダイだった、福島在住のジャーナリストの「放射能汚染された山菜が闇出荷されている」という告発が載っていたのは。

 憲法改正するかしないか、そっちばかりがマスコミにフィーチャーされるのは、もうすでに国の意志が国民の意志を飛び越え、絶対だってことの証しかもしれない。国というか、国を隠れ蓑にした一部の権力者たちの。

 憲法って国民のものだと思っていたけど、そういう人たちに利用されるようじゃ、もうすでに違ってる?

週刊朝日 2013年5月24日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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