投打二刀流、水泳世界記録保持者といったスポーツ選手をはじめ、文化、芸能の世界で活躍する逸材には1994年生まれの若者が多い。

「いままでも“桑田・清原世代”や“松坂世代”といったように、優秀な野球選手がクラスター(集合体)となって世に出ることは、まれにありました。ただ、ここまで幅広くアスリートが集まった世代は、うーん……記憶にないかな」

 スポーツライターの玉木正之さんが思わずうなるほど、1994年生まれのアスリートの層は厚い。連日、この「94世代」が多くの話題を振りまいている。野球の大谷翔平や藤浪晋太郎、フィギュアスケート羽生結弦、村上佳菜子といった、すっかり“顔なじみ”のアスリートの他にも、世界で勝ち抜く技術や能力を持った94世代が次々と現れた。4月に行われた競泳の日本選手権で圧巻の「5冠」を成し遂げた萩野公介も、その一人。

 2014年のソチ五輪、16年のリオデジャネイロ五輪の主軸となる選手が次々と躍り出る。

 さらに、バレエの菅井円加や女優の二階堂ふみといった芸術・芸能分野でも世界が称賛する94世代が頭角を現している。

 その背景には何があるのか。社会学者で中央大学の山田昌弘教授が言う。

「一生懸命になりにくい『ゆとり教育』を受けるなか、努力やセンスで勝ち負けがはっきりするスポーツや芸術にやりがいを求めた世代なのかもしれません」

 小学生から中学生にかけての多感な時期に、結果を欲した。そこに“世界”も近づく。

「94世代の彼らが物心ついたころに、イチローが米メジャーに移籍(01年)、さらにサッカーの日韓W杯(02年)が開かれた。『世界は遠くない』という認識のもと、それぞれの競技で進んでいったことは大きい」(前出の玉木さん)

 94世代の視線は、常に世界を向いている。

週刊朝日 2013年5月17日号