都内の中学入試専門塾では、「経済的な理由で退塾を申し出た生徒」が年明けから十数人にのぼる。リーマンショックの翌年から増え始めた。だいたいが「高校受験のときに頑張らせたい」という理由だ。

 主に小学生を対象に中学受験の指導を行う日能研(本社・横浜)は現状に強い危機感を抱く。日能研関東の小嶋隆社長は語る。

「我々の事業の柱はあくまで中学受験指導。この層が薄くなると経営が立ち行かなくなる。私学の最大のネックは学費の高さ。補助金もありますが、個人負担が大きい。退学者の数が増えていると聞き、何か手を差し伸べる策はないかと考えました」

 そこで2010年11月、小嶋社長が四谷大塚を巻き込んで、私立学校奨学支援保険サービス(本社・横浜)という会社を立ち上げたのは、損保ジャパン(東京・新宿)と一緒に、中高一貫の私学向けに「授業料等減免費用保険」という商品を開発するためだ。私立校に通い続けるための、いわば「進学保険」だ。

 加入するのは、生徒や保護者ではなく、私立中学校、中高一貫校、大学付属の高校など「学校」だ。リストラ、会社倒産、長期入院、離婚などが原因で生徒の家計が急変したことに伴って、学校が授業料などの支払いを減免した場合に、公的制度の対象になっていない費用を生徒側に代わって支払うというもの。掛け金の負担は、学校と保護者の双方や保護者のみなどケース・バイ・ケースだ。

 保険金は、保護者の世帯収入の減少が前年度比25%以上なら半額、50%以上なら満額出る。夫婦共働きで、年収が合わせて2千万円というケースでは、仮に妻が失業して1千万円に減った場合でもあてはまる。

 これまでに20校近い私立学校から賛同を得た。すでに「失業」での適用は1件あった。

週刊朝日 2013年4月12日号