1月30日、中国海軍のフリゲート艦が、海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」に対して、射撃管制用レーダーを照射した。2月10日、このレーダー照射事件をテーマにシンポジウムが行われた。そこでノンフィクション作家の石井好氏は、尖閣諸島問題で「中国は、日本政府に裏切られたと感じている」という。司会を務めたジャーナリストの田原総一朗氏が解説する。

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 私は、当時の野田佳彦首相は中国が尖閣国有化を了承したと捉えたからこそ、「尖閣諸島を国有化する」と言い出したのではないかと考えていた。

 しかし、石川氏は私のこの考えを否定した。実は、昨年9月にウラジオストクで行われたAPECの場で、野田首相と会談したいと持ちかけたのは胡錦濤(こきんとう)国家主席の方だったという。

 胡錦濤主席は、戴秉国(たいへいこく)国務委員から「日本側は軟化している」と聞かされていて、そのことを野田首相に直接確かめたいと考えて、会談をセットしたのではないか。

 だが、戴秉国氏の話と異なり、野田首相が「尖閣諸島を国有化したい」と述べたので、胡錦濤主席は怒って「断固反対」と怒鳴った。その後、胡錦濤主席は戴秉国氏を散々に叱りつけたという。

 それで、中国側は「日本政府が裏切った」と激怒しているというのだ。そのことが、3月で親日派の戴秉国氏が辞め、反日派の楊潔チ(ようけつち)外相が後継につくと見られることに関係しているのかもしれない。

週刊朝日 2013年3月1日号