消化性潰瘍の原因となるピロリ菌感染について、2009年、日本ヘリコバクター学会は診療ガイドラインを改訂し、「感染者はすべて治療を受けるよう強くすすめられる」とした。しかし現段階では、すでに消化性潰瘍の治った痕のある人、早期胃がんの内視鏡治療を受けた人、そのほかの2疾患にしか保険診療が認められていない。今後の動向について、杏林大学病院消化器内科教授の高橋信一医師に聞いた。

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 ピロリ菌感染がない人では、潰瘍だけでなく胃がんの危険性も非常に低くなります。逆に、胃がん患者のほとんどにピロリ菌が関与していることもわかっています。

 しかしまだ40代の人で約3割、60代の人で約7割がピロリ菌に感染しているといわれています。除菌治療が完全には広まらない理由の一つに、予防的な治療だと保険診療にならないということがあるようです。

 この現状を打開しようと、日本へリコバクター学会や日本消化器病学会が中心になって、ピロリ菌の除菌治療やピロリ菌検査が保険診療になるよう厚生労働省に働きかけてきました。ようやく、13年には認可される見込みが出てきました。ピロリ菌除菌が進めば、今後は消化性潰瘍の患者数も、現在年間5万人の死亡原因である胃がんの患者数も、徐々に減っていくでしょう。

 消化性潰瘍の主原因は、かつてストレスだと考えられていました。現在、その説は否定されているものの、ストレスの関与もゼロとはいえないと思います。胃は第二の大脳といわれるくらい、ストレスの影響を受けやすい器官です。

 ただし、ピロリ菌がいないから食生活に留意しなくていいのかというと、そうではありません。1日3食の規則正しい食事を基本に、減塩を心がけ、消化しやすいものを摂取することで、胃がんやそのほかの生活習慣病の予防にもつながります。胃をいたわって、食べる楽しみが味わえる生活を送ってください。

週刊朝日 2013年2月1日号