教育評論家の尾木ママこと、尾木直樹さんにいじめ対策や教育政策の観点から、衆院選への一票の投じ方について話を聞いた。

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 私はもう、教育委員会はなくしてしまえばいいと思ってるんです。教委というのは戦後まもなく、政治権力が教育を左右しないようにつくられたものです。それが現場を政治的に支配する道具になって久しい。昨年10月に、大津市でいじめを受けていた中2男子が自殺した問題でも、いじめの事実を隠蔽し、問題解決へ動き出しませんでした。

 日本維新の会は教育制度の改革で、教育委員会制度の廃止にも触れていますね。代わりに何をつくっていくかという議論は必要ですけど、大賛成ですね。

 ただし、橋下徹さんが大阪でやってきたことは疑問符がつくと思っています。教育の目標を首長主導で決める条例を大阪府と大阪市で制定しましたよね。首長は、選挙の得票数で1票でも多く獲得すればなれます。だけど、もしかしたら首長の教育目標に、有権者の多くが反対かもしれない。教育は、その時々の選挙結果で変えるべきものではありません。もっと普遍的で、地道なものなんです。橋下さんは気に入らなければ選挙で変えればいいと言ったけど、そんな軽薄なもんじゃない。

 みんなの党は、教委を設置するかどうかを「自治体の判断に任せる」としています。地方分権の視点からして、これは評価できると思います。

 いま「いじめは犯罪じゃないか」という議論が出てきている。ここを大事にすべきです。民主党は公約に「いじめ防止措置の法制化」を盛り込んでいます。民主党の関係者に見せてもらったことがありますが、彼らの「いじめ対策推進法案」は、総合的によくできていましたよ。

 いじめの加害者の出席停止や日本未来の党の「心の教育」では、気持ちはわかりますが、いじめは解決してきませんでした。もう繰り返すのはやめにして、米国に学んで法制化へと舵を切りましょうよ。

週刊朝日 2012年12月21日号