一家3人孤立死の壮絶現場 食料は飴玉だけ、所持金は1円硬貨数枚

週刊朝日
 東日本大震災後、「絆」を見直す動きが強まっているにもかかわらず、孤立死はなぜ続くのだろうか。ノンフィクションライターの橘由歩氏が、今年2月20日に死後2カ月ほどの変わり果てた姿で見つかったAさん(当時64)の足跡をたどった。同じ室内には、妻(同63歳)と長男(同39歳)の遺体もあり、発見時は「一家3人が孤立死か」とメディアをにぎわせた事件だった。

 父子はもともと左官職人として働いていたが、パチンコや競輪などのギャンブルで借金を作り、一家は2001年に秋田県から埼玉県へ引っ越していた。

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「孤立死」。今年の冬から春にかけては、とりわけこの言葉を耳にすることが多かった。実は孤立死そのものに明確な定義があるわけではない。ニッセイ基礎研究所主任研究員の廣渡健司さんは、高齢者の孤立死実態調査を行った際に孤立死を「死亡から4日以上たって発見された死」と定義した。日常的に他人との接点がなく社会から孤立しているため、なかなか発見されない死という意味だ。

 廣渡さんは「亡くなってから遺体が発見されるまでの期間は、生前の人とのかかわりの頻度と符合する」と指摘するが、これはそのまま櫻庭さん一家にも当てはまる。

 3人は埼玉に引っ越してきてからも、周囲の人とは一切交わらなかった。同じアパートで暮らす9世帯のうち、Aさんとあいさつを交わす仲だったのは、同じ階に住んでいた主婦だけだという。

 ひっそりとした暮らしが暗転したのは、Aさんが体を壊し、仕事ができなくなったころからだ。前出の主婦によれば、10年秋ごろではないかという。

 埼玉県警によれば、死亡推定時期は同年12月中旬から下旬とみられる。遺体が見つかった時、Aさんと妻は6畳間に並んで敷かれた2組の布団に横たわり、長男は4畳半に敷いた布団で亡くなっていた。長男のそばには嘔吐物が入ったバケツがあり、近くでは飼い猫も死んでいた。部屋にあったのは飴玉だけで冷蔵庫は空っぽ、所持金は1円玉が数枚だけだった。

 昨年8月ごろから、家賃、水道、ガス、電気と次々に滞納し、昨年末にはガスと電気が止められていた。しかし、一家は生活保護を申請せず、外に向けて積極的にSOSを発信することはなかった。

※週刊朝日 2012年7月13日号

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