妻も被害者なのに…松本サリン事件で犯人と疑われた男性の悲しみ 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

妻も被害者なのに…松本サリン事件で犯人と疑われた男性の悲しみ

このエントリーをはてなブックマークに追加
週刊朝日

 死者29人、被害者6500人以上。これは、オウム真理教が起こした一連の事件の被害者数である。「ポア」(救済)の名のもとに繰り返された事件のなかで、教団による化学兵器を使った大量殺人の序章となった「松本サリン事件」。死者8人、重軽傷者約600人の事件を振り返る。

 長野県松本市在住の河野義行さん(当時44)は1994年6月27日夜、夕食をすませて自宅の居間でくつろいでいた。

 午後11時ごろ、妻の澄子さん(同46)が突然、体調不良を訴えた。河野さんが澄子さんに横になるよう勧めていると、犬小屋のほうから不審な物音がする。見てみると、飼っていた2頭の犬が体をけいれんさせ、口から泡をふいて倒れていた。

 居間に戻ると、澄子さんが仰向けに倒れて全身をけいれんさせている。驚いた河野さんは、慌てて119番通報した。救急車が河野さん宅に到着すると、澄子さんだけでなく、河野さんとその長女もサリンの中毒症状を起こしていた。

 翌日、長野県警は松本署内に有毒ガス中毒事件の捜査本部を設置する。捜査幹部は「第一通報者の捜索は不可欠」と判断し、被疑者不詳の殺人容疑で、河野さん宅の捜索令状を取った。

 すると、河野さん宅から二十数種の薬品が押収され、その中には劇物の青酸カリもあった。

 マスコミ各社は警察から流された捜査情報を元に、河野さんを犯人扱いするような報道を連日行った。

 しかし、当然のことながら河野さんは犯人ではなかった。

 同年7月9日、山梨県上九一色村の教団施設内で悪臭騒ぎが起きた。近くの住民が異様な臭いと目の痛みを覚え、息苦しさや吐き気などを訴えた。同様の悪臭騒ぎはその後も起き、長野県警は山梨県警の案内で教団付近施設内の土砂を採取した。

 こうして警察は河野さんを疑いつつ、オウム真理教による犯行の可能性も検討し始めた。

 そんななか、95年3月に地下鉄サリン事件が起きる。警察は河野さんが松本サリン事件と全く無関係であることを認めざるを得なくなった。

 長野県警は河野さんに「事件とは無関係。心労をかけた」と"遺憾の意"を表わした。報道各社も事件当初の報道で「河野さんが容疑者であるかのような印象を読者に与えた」として、おわびや謝罪を表明している。

※週刊朝日緊急増刊 オウム全記録


週刊朝日


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

続きを読む

関連記事関連記事

このエントリーをはてなブックマークに追加
あわせて読みたい あわせて読みたい