皮膚そのものが死ぬ原因ではないから、体内の老化を皮膚という見た目が表しているわけです。私は以前は「見た目より内側のアンチエイジング」と考えていましたが、今は「見た目も重要」と考え方を改めました。

北條:細胞の老化に関連しているのは染色体の末端にあるテロメアという領域の長さです。いわば細胞が老化し、死んでゆくまでの導火線・タイマーみたいなもので、細胞分裂するたびにテロメアは短くなり、それが尽きると細胞は老化して死にます。皮膚でいうと、テロメアが短くなって、コラーゲンを作らない老化した細胞が皮膚の下で増えてくると、肌のつやがなくなり、見た目にも年を取って見えるんです。

白澤:ハーバード大学の研究ですが、遺伝子操作をして、ある薬を投与したときにテロメアが長くなる、というネズミを作りました。年を取ったネズミにその薬を投与すると、見た目がどんどん若々しくなった。テロメアを伸展する、というのは、見た目のアンチエイジングの方法として、注目されていくと思いますよ。

 さらに面白いのは、薬の投与によりネズミの脳が大きくなったことです。いったん老化したものが、元に戻る可能性を示唆したという点で、衝撃的な論文でした。ただ、老化しない細胞もある。例えばがん細胞です。がん細胞は不老不死で永久に分裂し続けます。究極のアンチエイジングが実現すると、結局、がんで死ぬということになる。

北條:そこなんですよね。細胞医療、再生医療はがんの問題を解決しなければいけない。

※週刊朝日 2012年6月29日号