衆院議員16人の「会派離脱届」は終わりの始まり!? 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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衆院議員16人の「会派離脱届」は終わりの始まり!?

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週刊朝日

民主党分裂が始まった

民主党の衆院議員16人の会派離脱表明を機に、永田町では一気に菅直人首相(64)の「退陣論」が噴き出した。ウラで糸を引いているのは、やはり小沢一郎元代表なのか。もはや"お家芸"の内輪もめが繰り広げられる中、一つだけハッキリしていること――それは、民主党内が、大分裂に向かって風雲急を告げていることだ。

 会派離脱騒動から一夜明けた2月18日午後、永田町の議員会館前で、菅首相の側近が、旧知の本誌記者に取り乱した様子で声をかけてきた。
「今日の朝日新聞の夕刊1面、すごいんだって!?」
 彼が慌てたのも無理はない。この日、朝日新聞の夕刊1面のトップ記事には、こんな見出しがデカデカと躍っていたのだ。

〈「首相代えてもいい」 民主幹部、公明に打診〉

 要は、焦点となっている新年度予算の関連法案成立を巡って、民主党の「有力幹部」が公明党幹部に対し、菅首相の退陣と引き換えに協力してくれないかと打診していた――という内容だ。つまり、菅首相を支えるべき民主党幹部ですら、もはや菅政権の将来を見限っているというのである。
 菅首相自身は、

「そういう古い政治に戻る気はさらさらない」

 と、にわかに浮上した退陣論の火消しに躍起だが、永田町では、これが15日午後に行われた民主党の仙谷由人代表代行と公明党の漆原良夫国対委員長の会談での話だった、という見方が"通説"になっている。

「ただし、実際には、『どうすれば、予算で協力してくれるのか』と迫った仙谷さんに、漆原さんが『菅首相の首を出すならいいよ』と応じ、『うーーん』というレベルの会話でした。それを朝日が大げさに書いたんですよ」

 民主党国対幹部はそう弁解するが、一方でこんな見方も出ている。

「実は、これは公明党側のリークでした。公明党としては、追いつめられた菅首相が衆院解散・総選挙をしてもOK。総辞職でもOK。王手飛車取りの妙手なんです」(野党関係者)

 いずれにしても重要かつ深刻なのは、菅首相の「話し合い退陣論」が与野党間で公然と語られ始めたという事実である。もはや、菅政権は空中分解寸前だ。
 菅首相がここまで追い込まれた引き金、それは言うまでもなく、小沢氏を支持する議員16人の蜂起だ。彼らは予算関連法案の採決で造反する構えも見せる。
 09年夏の総選挙で、比例名簿の下位で選出された議員は、「逆風が予想される次の選挙で再選する可能性はゼロ」(永田町関係者)といわれるだけに失うものがない。だから「造反」という強硬手段に突っ走ることができる、というわけだ。

「これで菅政権は"詰み"ですよ。予算関連法案を衆院の『3分の2』を使って再可決することも不可能になる。もともと民主党は、自由党との『連立政党』なので、こうした分裂はあり得ることなのに、菅首相はまったく織り込んでいなかった。そちらのほうが、むしろ驚きです」(政治記者)

 党常任幹事会で、小沢氏の党員資格停止処分の方針が決まったのが15日。それに連動するような彼らの動きは、当然のごとく"小沢別動隊"と受け止められている。小沢氏が倒閣に動いた――永田町では誰もがそう受け止めている。
 だが、会派離脱グループを率いる渡辺浩一郎衆院議員はこう訴える。

「巷では小沢さんの指示で動いていると言われますが、それはまったくない。事前の相談もしていません。私たちが訴えたいことは一つです。菅政権はマニフェストも政治主導も捨てたようですが、私たちは本来の民主党の姿に戻ってもらうため、立ち上がりました」

 とはいえ、会派離脱という今回の奇策の"発案者"は、小沢氏の側近の平野貞夫元参院議員だった。

「昨年末、小沢さんに『民主党から離党者を出さずに菅首相を代えるには、この方法しかない』と提案しましたが、小沢さんは『そんなの邪道だ。民主党を壊すことはしてほしくない』と激怒して、けんかになったんです。それでこの話はいったん立ち消えになりましたが、その後、私が数人の議員にこの構想をささやき、技術的なアドバイスもしました」(平野氏)


◆約束の地を探す民主党難民たち◆

 会派離脱騒動が起きた17日昼、小沢氏から平野氏に電話があり、

「16人の意思には参った。あんたにはキツいことも言ったが、この決断は理解しないといけない」

 と語ったという。
 小沢氏が今回の動きにどれだけ関与していたのか定かではない。しかし、当人たちの意識がどうであれ、"小沢パージ"の影響が党内を大きく揺さぶっているのは事実だ。
 もちろん、執行部側も、ただ手をこまねいているわけではない。民主党の国会対策委員会は、16人が予算関連法案などに造反しないよう、個別に説得することを決めた。
 16人の一人、石井章衆院議員のところには、さっそく三日月大造・国対筆頭副委員長からの説得工作があったという。

「三日月さんは『造反するなら処分する』と言って、自粛を求めてきました。脅しといえば脅しです。私が『消費税増税を法案化するなら、解散・総選挙で国民の信を問うべきだ!』と訴えると、顔を引きつらせてましたよ」(石井氏)

 民主党の執行部内にも、「16人といっても名前貸しのような議員もいる」(国対関係者)というクールな見方があるにはある。しかし、分裂の流れは、もはや止まらないところまできている。
 キーマンの一人は、地域政党「減税日本」を立ち上げ、2月6日の名古屋市長選で圧勝した河村たかし氏である。

「河村さんと小沢さんはもともと近い。8日に、愛知県知事選で圧勝した大村秀章氏も交えて3人で会談したときは、わざわざテレビまで入れて結束をアピールしました。減税日本を核として新党を立ち上げ、今回の16人も含めた小沢系議員がまとまって飛び出す際の"受け皿"にするのではないか、との観測も広がっています」(与党関係者)

 本誌が渦中の河村氏に直撃すると、

「何でもかんでも来られても困るわなあ。ちゃんと減税をやってくれるならいいけれど、就職活動みたいな保身ではいかんわな」

 と煙に巻く。しかし、その"約束の地"がどこかは別にして、16人の一人で、小沢氏の元秘書の川島智太郎衆院議員は、

「造反して除名されたら、新党を立ち上げる覚悟でやっている。国会議員が5人以上いれば政党として扱われますから」

 とまで語るのだ。
 ここまでくると、民主党の分裂、いや溶解は必至と言わざるを得ない。
 さらに、これらの動きに連動するとみられているのが、本誌2月4日号で"新党構想"をぶち上げた原口一博前総務相だ。昨年の党代表選で現職閣僚ながら小沢氏を支持した原口氏は、地域主権改革を進める政治団体「日本維新の会」を設立し、大阪府の橋下徹知事や河村氏らとの連携を模索している。

「原口さんは、橋下さんや河村さんが進めている地域主権の動きを全国的に受け止める"受け皿"をつくろうとしています。小沢系議員も別途、今春の統一地方選をにらんで、地方議会から有望な候補者のピックアップ作業を進めているというので、そことの連携もあり得ます」(原口氏周辺)


◆追い込まれても「あっけら菅」と◆

 ほかにも、本誌が先週号で報じた、桜井充財務副大臣や松本剛明外務副大臣らが呼びかけ人の「政策論議中心の民主党にするフォローアップ会議」には、中間派の議員たちが集結しつつある。

「勉強会には40~50人は集まる予定。みんな、とにかくこのままじゃダメだと思っているのです」(桜井氏)

 小沢派の中塚一宏衆院議員と、菅首相と近い玉木雄一郎衆院議員らが共同で代表世話人を務める「マニフェスト財源の確保研究会」も、「実は、真の目的は倒閣」(参加議員の一人)と鼻息が荒い。

「すでに60人ほどが合流したいと言ってきているけど、当面はメンバーを増やさないことになった。大勢で話し合っていたら、政権崩壊のタイミングに間に合わない。3月中旬までに財源に関する報告書をまとめてから賛同者を募る。かなり集まるんじゃないかな。みんな、『ノアの方舟』を探してるからね」(同前)

 もはや党内は"次の受け皿"を求め、激しく動き始めているのだ。
 もっとも、完全に追い込まれた形の菅首相は、意外なほど明るいのだという。

「報道で『話し合い退陣論』が出た後も、菅さんはすごく元気だったよ。衆院予算委員会の『政治とカネ』を巡る集中審議や党首討論に向けて、『大変だけど、みんなで頑張ろうな』って、あっけらかんと言ってましたから」(民主党幹部)

 それどころか、これまで一貫して完全否定してきた衆院解散について、

 「国民にとって何がいちばん重要かを考えて行動する」

 と、その可能性をちらつかせて、「退陣論」に対抗する姿勢を示している。
 実際、永田町ではすでに3月解散説がささやかれ始めている。「3月3日解散」と「3月末解散」の2説が有力だ。

「まず、菅さんが3月1日まで首相をやれば、鳩山由紀夫前首相の在任日数を超えます。官邸のカレンダーには、3月1日の欄に『鳩のマーク』が付いているという冗談まで出ています(笑い)。さらに、新年度予算案は3月2日までには衆院を通過し、年度内に成立する見通し。そこで、3月3日解散、統一地方選前半戦と重なる4月10日投開票という日程が浮上しています」(永田町関係者)


◆現実味を帯びる衆院3月解散説◆

 そんな理由で解散されてはたまったものではないが、もう一つの説にもそれなりの根拠がある。

「16人の造反で赤字国債を発行するための公債特例法案が通らないと予算が執行できない。そうなれば、景気に大きな悪影響を及ぼし、マーケットが大混乱する恐れがある。それを避けるには、野党が予算関連法案に賛成するのと引き換えに解散するしかない。その場合は、本予算が自然成立するであろう3月末を待って、解散に踏み切る可能性が高い」(民主党中堅議員)

 こんなことが語られ始めている時点で、もはや政権は末期だ。
 小沢氏直系の議員でつくる「一新会」の衆院議員は、こう信じて疑わない。

「16人の造反は、菅さんが辞めた後の政界再編に向かって突き進む号令みたいなもので、自分は近く『解散』があると考えている」

 結局、「脱小沢」にこだわった菅首相は、目の前の権力闘争に熱中するあまり、逆に自分が追い込まれてしまったことに気づかなかったのか。
 16人の離脱について報告を受けた小沢氏は、こう言ったという。

 「菅ではもうダメだ。民主党もダメだ」

 これまで本誌のインタビューなどでも、かたくなに「民主党で日本に二大政党制を定着させる」と言い続けてきた小沢氏が、ついに舵を切ったと思わせる発言である。
 民主党が分裂すれば、日本の政治は再び"空白"に見舞われる。国民が政権交代に賭けた思いを、もう一度思い出すべきだ。 (本誌・鈴木毅、川村昌代、森下香枝)


◆「乗ってはいけなかったのに、分断されてしまった」◆

本誌ネット中継「UST劇場」、原口一博前総務相が生出演
 院内会派離脱問題が紛糾するなか、独自の動きを強める原口一博前総務相(51)が18日、本誌のネット中継「UST劇場」に生出演した。山口一臣編集長やジャーナリストの今西憲之氏との1時間余にわたる丁々発止の触りをご紹介する。

――騒動の黒幕は原口さんですか。

 (詳細は)全く知りませんし、黒幕などではありません。ただ、某閣僚のように、彼らのことを「なに考えているかわからない」「嫌なら出ていけ」と言って済む話ではないでしょう。

――最近の民主党はどこかおかしくないですか。

 非小沢か親小沢かという「分断の構図」にはめられ、「小沢さん抜きだったら協力する」と誰かに言われて、遮二無二に同志を追い出そうとした。分断工作を仕掛けてくる相手は、官僚や自民党だけでなく、自分たち自身だったことも多かったんじゃないかな。(苦笑)

――民主党の今後は?

 原点に返る必要があります。僕は菅さんを面と向かって批判しようなんて気持ちは全然ない。ただ、菅さんは隣の芝が青く見えたんですよ。与謝野さんがどんな人かは知らないけれど、少なくとも古い財政論の人で、選挙区で落ちた。その人がなぜ政権の真ん中にいるのか、理解できません。

――どう変えますか。

 月内に政策集団「日本維新連合」を立ち上げます。平和創造国家を造るための教育改革を中心に、地域主権改革、新しい公共の実現などを目指します。

――それは「原口新党」?

 違います。僕は党内に派閥ができるのがずっと嫌だったんです。同じ民主党なのに「あなたはあそこの人ですね」ってなる。だから政策集団。

――菅政権は、あとどれくらい持ちますか。

 身もふたもない質問ですね(笑い)。これは持たさなきゃいけない。菅さんからよく電話がかかってきますが、「原点を、仲間を、約束を大事にしましょう」って言ってます。

――原口さんが早く旗頭になったらいいのでは?

 そういう乱暴な(笑い)。物事には順番というものがあって、まずはこの予算を国民に届ける。それをサボったら、ひどいと思う。

――菅政権で予算を届けられなくなれば動きますか。

 それは問題設定が逆でしょう(笑い)。届けるようにしようって言ってるんだから。巧妙な質問だけど、乗りませんよ。

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