ほっとひと息つきたい時に欠かせない、コーヒー。4月16日は、デロンギ・ジャパン株式会社が制定した「エスプレッソの日」です。国際カフェテイスティング協会イタリア本部でも、「イタリア エスプレッソデー」としてこの日を記念日としています。イタリアのカフェ文化を象徴する「エスプレッソ」は、どのようにして世界中に広まったのでしょうか。

今回はエスプレッソの歴史と美味しさの秘密、本場イタリアでの楽しみ方をご紹介します。

誕生から120年。イタリアから世界へ

15世紀に豆を焙煎して煮出したコーヒーが飲まれるようになり、17世紀にはヨーロッパにコーヒー豆が伝わったとされています。

コーヒーの歴史から見るとエスプレッソの歴史は意外に浅く、誕生したのは今から120年前のこと。1901年イタリアのルイジ・べゼラがパーコレーターからインスピレーションを得て、蒸気圧を利用したエスプレッソ・マシンを発明しました。

1906年4月に開幕したミラノ万博で、エスプレッソ・マシンで抽出したコーヒーを「Caffè Espresso」(カフェ エスプレッソ)と表記したのが「エスプレッソ」の始まりといわれています。イタリアで生まれたエスプレッソは、そこからヨーロッパ、世界中へと広まっていきました。近年はスターバックスをはじめとするシアトル系コーヒーチェーンが取り入れたことで、日本でも親しまれていますね。

コーヒーの旨味をぎゅっと凝縮した、贅沢な飲みもの

エスプレッソとはイタリア語で「エクスプレス(急行)」という意味があり、その速さが他のコーヒー抽出方法との最大の違いです。深煎りで細かく挽いたコーヒーに高い圧力をかけて短時間で抽出することで、豆が持つ旨み成分(糖質と脂質)が最大限に引き出され、濃厚でコクのあるコーヒーになるのです。

少量(30ml弱、ダブルは倍の量)を抽出するエスプレッソは、普通のコーヒーカップの半分ほどの大きさのデミタスカップで供されます。エスプレッソは美味しさのエキスが凝縮された、とても贅沢な飲みものなのです。エスプレッソの香りを閉じ込める「クレマ」も特徴のひとつ。このきめ細かいクリーム状の泡の層は、かき混ぜても消えない状態が理想とされています。

エスプレッソは文化!本場イタリアでの定義と楽しみ方

イタリア本国では、エスプレッソはISO45011(農作物加工品質認証N.214)のもと、イタリアエスプレッソ協会(INEI)によって下記の通り定義付けされています。(一部抜粋)

◆イタリアエスプレッソとは

⚫︎抽出の圧力・・・9(±1)気圧

⚫︎抽出の時間・・・25(±5)秒

⚫︎豆・・・・・・・5種類以上のブレンドをした豆で抽出

⚫︎粉の量・・・・・7(±0.5)g

⚫︎カフェの温度・・67(±3)℃(カップ内)

⚫︎カフェの量・・・25(±2.5)ml

◆イタリアエスプレッソの特徴

(1)見た目(表面の色)

濃いヘーゼルナッツ色をしたクレマ(揮発性オイル成分)

(2)香り

豊かで複雑な香り(花、果物、チョコレート、キャラメル、トースト香、スパイスの香りなどが浮かび上がる)

(3)口当たり

なめらかな丸み、やわらかさ、とろみ、しっかりした骨組み。

充実し丸みのあるどっしりとしたボディ感。柔らかく、滑らかな舌ざわり。

(4)余韻(持続性)

余韻の持続時間が長く、重量感および充実感がある。

花やスパイスを思わせる芳香がバランス良く含まれる。

※一般社団法人 国際カフェテイスティング協会–日本公式サイトより

エスプレッソにフォームミルクを加えた「マキアート」、スチームミルクを注ぎフォームミルクを加えた「カプチーノ」など、エスプレッソのバリエーションドリンクが、ゆっくり過ごすカフェでの定番という人も多いのではないでしょうか。

一方、エスプレッソは、その名のとおり短時間で飲み切るのがお約束。イタリアでは多めの砂糖を入れて、食事の後にいただくのが一般的とか。砂糖(グラニュー糖)がエスプレッソの表面にのったら、クレマが上質なあかし。甘さ、コクと苦味、香りを楽しむエスプレッソは、食後のリフレッシュにもぴったりです。

参考文献

村澤智之/山本加奈子『コーヒー語辞典』誠文堂新光社

参考サイト

一般社団法人 国際カフェテイスティング協会–日本公式サイト

日本食糧新聞