湿度や気温の高い日が続くと、みずみずしい野菜や果物がひときわ美味しく感じられます。メロンやスイカも出回り始め、キュウリ、トマトなどの夏野菜が食卓にのぼる機会も多いのではないでしょうか。

ところで、メロン、スイカ、キュウリ、トマトは、それぞれ野菜か果物かご存知でしょうか。今回は、知られざる野菜と果物の「分類」についてご紹介します。

「果実的野菜」は、野菜?それとも果物?

野菜なのか果物なのか、しばしば議論されるスイカとメロン。植物分類学上では、どちらもキュウリやカボチャ、ズッキーニなどと同じウリ科に属しています。ということは、スイカもメロンも「野菜」になるのでしょうか。

農林水産省によると、苗を植えて1年で収穫する草本植物は「野菜」として取り扱っています。一方で、目安として2年以上栽培する草本植物及び木本植物で、果実を食用とするものを「果樹」と定義しています。

スイカやメロン、イチゴなどは、栽培方法が定義上の果樹ではなく野菜に該当するため、分類上は「野菜」ということになっています。農林水産省の生産出荷統計上では、このように野菜とされるもののうち果実的な利用をするものを「果実的野菜」として、さらに分類しているのです。

ところ変われば。キュウリやトマトもゆれ動く

野菜か果物かの定義は、国によっても異なるようです。アメリカでは、調理科学の権威ハロルド・マギーによる「植物学的には種子を取り巻く部分を果実といい、キュウリやナス、トマトは果実である」との見解が一般的とか。

とはいえ、実際に食卓にのぼる時は野菜として消費されていることから、あくまでも植物学上でのことです。日本でメロンやスイカが生産時には野菜に分類されても、店頭では果物のコーナーで販売され消費されていることと共通しますね。

キュウリ、ナス、トマトは、農林水産省では「果菜」に分類され、果実を食用とする野菜と定義しています。トマトも国によって、野菜だったり果物だったりするようです。分類の判断は、その作物がどのように消費されるのかといった食文化にも関わりがありそうですね。

視点をどこにおくかで、分類が変わる!

植物学上や生産上の分類では、「野菜」とされているメロン、スイカ、イチゴですが、総務省の家計調査や流通の場では、実際の消費形態に合わせて「果物」として扱われています。

植物としての特性から見ると「野菜」、生産出荷時には「果実的野菜」、市場やスーパーでは「果物」と変化しているのです。野菜か果物かの分類や定義は、その場の必要性に応じて決められているのですね。

整理すると、メロンやスイカ、イチゴは、学問的には「野菜」、実際の生活感覚では「果物」ということになります。つまり、とらえ方によってどちらにもなり得るということなのですね。

英語のvegetable(野菜)とfruit(果物)は、それぞれ由来するラテン語では「活気、生命力」、「楽しみ、恵み」を意味します。梅雨時から夏場は、水分をたっぷり含んだ野菜や果物がふんだんに出回ります。ぜひ日々の生活に取り入れて、旬の恵みを楽しみましょう!

参考サイト

農林水産省

独立行政法人農畜産業振興機構

NIKKEI STYLE