「夏至」とはいえまだ梅雨の真っ只中。雨が降り続き太陽の姿が見えないことも多いことでしょう。日の出が4時半頃で日の入りが7時頃と昼の時間が15時間近くあり、冬至に比べると5時間ほども昼が長いのです。静かで爽やかな早朝に活動を開始すれば1日を有意義に使えますね。暦の上では夏の真ん中、本番の夏がくる前に、歳時記で今の季節をおさらいしておきましょう。

夏になったんだ!こんな鳥の声を聞いて感じました

先日洗濯物を干していたら遠くから郭公(かっこう)の声が聞こえてきました。思わず手をとめ耳を澄まし神社の方を眺め、次の声を待ちながら「ああ、夏なんだ」と思いました。たくさんの鳥の声を毎日聞きますが、季節をはっきりと告げてくれる鳥の声はいいものですね。「カッコウ」という澄んだ声の響きは「さえずり」といってオスが縄張りを守るときや、求愛の時に出す特別な鳴き声だそうです。しばらく聞いていましたら、なんとものんびりとした気分になってきました。

実は「閑古鳥」が郭公の別名です。お客さんがなかなかやって来ない、商売あがったりのたとえは、郭公ののんびりとした鳴き声からきたのです。

のんびりといえば、郭公はほかの鳥の巣に卵を産んで育てて貰う「托卵」という習性をもっています。巣の中の卵をひとつ持ち去って数合わせをしたり、孵った郭公の雛が間借り先の本当の雛を巣の外へ押し出したりと、その習性はなかなか逞しいようですよ。のんびりとした声とは少し違うようですね。

5月に日本に飛来して8月の終わり頃には去って行く渡り鳥の習性は、まだまだわからない事が多いようです。季節を感じさせてくれるこの囀りは、日本の夏には欠かせないキャラクターです。

住宅街でも聞かれる郭公の囀り
住宅街でも聞かれる郭公の囀り

菖蒲の花が咲く時期です。雨に濡れた姿もしっとりと艶やかです

「いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」といわれるように、どちらがどちらか本当にまぎらわしい花です。花の付け根に網目模様があるのが菖蒲、ないのが杜若ということです。5月の端午の節供に用いるのは菖蒲(しょうぶ)の葉、この葉に似て美しい花をつけることから花菖蒲(はなあやめ)とよばれ、やがて花がとれて菖蒲(あやめ)と呼ばれるようになったそうです。また品種改良された花菖蒲(はなしょうぶ)も生まれ、いっそうまぎらわしくなりました。

色とりどりの花は大変美しく、濃い紫は華やかで薄い色とのグラデーションには気品がただよいます。黄色の鮮やかさには目を奪われ白の清楚さには落ち着きを感じます。陽差しを浴びてまっすぐに咲く姿はりりしく、雨にうたれても水を含んだしっとり感に風情があり、どの花を見てもそれぞれの美しさに心を癒され元気を貰える花です。

みなさんの家の近所の公園や水辺でもきっときれいに咲いていることでしょう。

花菖蒲園
花菖蒲園

水無月も終わりへ。「夏越しの祓え」で健やかを祈り新たな夏へ

旧暦の6月と12月の晦日には祓えの行事が神社で行われています。特に6月は暑さと湿気から疫病が流行りやすい時期といわれ、夏が無事に越せますようにとの祈りをこめ、茅萱で作った大きな輪、茅の輪をくぐり無病息災を祈る「夏越しの祓え」が行われてきました。

「みな月のなごしの祓する人は ちとせの命延ぶといふなり」

『拾遺和歌集』にある読み人知らずの歌です。この歌を唱えながら茅の輪を8の字を描くように3回くぐるというものです。今年は新型コロナウイルスの感染が広がり、世界の人々の生活が大きく変わらざるを得なくなった特別な年。昔から伝えられてきた素朴な行事ですが、こめられた祈りの心に今の私たちは大いに共感することができますね。

この日に食べるのが「水無月」とよばれる外郎(ういろう)生地の上に小豆をのせた三角形のお菓子です。小豆には悪魔払いの意味が、三角の形は暑さを払う氷がかたどられているとのこと。氷など庶民には手の届かない高価なものだった頃の、せめて形だけでもといった気持ちが伝わります。

田植えが終わり農作業が一段落した人々の生活の節目となっているのが「夏越しの祓え」といえそうです。私たちもまだまだ、感染リスクを考えた行動をとらなければいけない時です。

季節の変わり目に身の健やかなことに感謝しながら、無事に夏を過ごしていけるよう願ってまいりましょう。

鶴岡八幡宮の茅の輪
鶴岡八幡宮の茅の輪