日毎に朝の空気もどことなく柔らかさが感じられ、草木も芽吹きはじめる春…今年は意外な場所で植物に逢えます!
東京都庭園美術館(港区白金台)では「ガレの庭~花々と声なきものたちの言葉」が開催中(~4/10)です。ガラスの中の自然美を探しに出かけませんか?
・デザイン画 「脚付杯 ひなげし」紙に鉛筆、水彩1900年頃 オルセー美術館蔵
(c)RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

植物に対する愛と造形への投影

エミール・ガレ(1846-1904)は、ガラス装飾などの工芸でアール・ヌーヴォーを牽引したことはよく知られるところですが、実は植物をこよなく愛し、自邸に2ヘクタール(約6,000坪)の庭を持ち、3,000種あまりの植物を育てていたことをご存知でしょうか?
10代半ばから植物採集をはじめ、39歳でフランス植物学会会員に選出されたガレ。作品を作ることと植物の声を聴くことは、彼にとって生きることの両輪であったことが次の言葉に集約されています。
「植物学に対する私の愛をわかっていただければ、私の作品についてもっと多くを理解していただけることでしょう」(ガレから美術評論家エミール・ハノーヴァー宛ての書簡より)
植物を育み、愛で、観察し、作品にその魂をこめていたことが伝わってくる言葉ですね。

ガレの庭を邸宅美術館に再現~春の日差しの下で

本展覧会では、オルセー美術館所蔵のデザイン画も作品と併せて展示されており、ガレの目が移しとった「一瞬の美」と共に丹精込めて作られた作品を鑑賞することができるのもおすすめポイントの一つです。
デザイン画はオルセーに、作品は各地に散らばっているため、その両方が一度に揃うのは約100年ぶりとか…≪脚付杯 ひなげし≫もその一つです。1900年に作成され、パリ万博に出品された本作は、優美な曲線のなめらかさが秀逸です。
また、東京都庭園美術館は、アール・デコを代表する邸宅美術館でもあり、一般の美術館とは違い自然光の中で作品を楽しむことが出来ます。朝・昼・夕…日差しの角度が変わるごとに作品の表情も変わり、お天気の日、曇りの日、雨の日、それぞれの変化も気になるところ…何度訪れても楽しめそうです。アール・デコの館でアール・ヌーヴォーの自然美をお楽しみください。

「脚付杯 ひなげし」色ガラス、マルケットリー 1900年パリ万国博覧会出品作 北澤美術館蔵
「脚付杯 ひなげし」色ガラス、マルケットリー 1900年パリ万国博覧会出品作 北澤美術館蔵

桜の期間の週末夜間延長とイベントなど、楽しみ方もいろいろ

展覧会会期も残すところ一か月余り…展示以外にも楽しみ方はいろいろあります。3月のイベントと館内情報は下記の通りです。
*トークイベント「キノコの世界から見たガレ」:3月13日15時~16時半。講師はきのこ愛好家でウェブデザイナーのとよ田キノ子さん、ひとよ茸についてはどんなお話しが飛び出すでしょう?
*ラーニングプログラム「あーととあそぶにわ、ダレのにわ?」:3月12日・13日・27日各12時~15時。よちよち歩きからの小さなお子さんとそのご家族で楽しめるプログラムです。美術が好きだけれどお子様連れだと…と足が遠のいている方、必見です!
*観桜期間の夜間延長:3月25日、26日、4月1日、2日、8日、9日は、通常18時までの開館を20時まで延長(入館は19時半まで)、アプローチや庭の桜を一緒に楽しむことができます。
その他、リニューアル後にできたカフェでは、展覧会に合わせたメニューもあり、展示の余韻を楽しむこともできます。2月25日からは、「ペリエジュエ」のシャンパーニュによる特別メニューも登場しています。
また、玄関右手に設置されたウェルカムルームや授乳室など、様々な世代に向けた施設もぜひ楽しんで下さい。(詳細はリンクの美術館サイトを参照)
都会の真ん中に現れた「ガレの庭」で、生きとし生けるものの声が宿るガラスの中に、ガレの在りし日の想いを感じてみてはいかがでしょうか?

参考:東京都庭園美術館 公式サイト

「ひとよ茸文花瓶」色ガラス、マルケットリー・アンテルカレール 1900-1904年 北澤美術館蔵
「ひとよ茸文花瓶」色ガラス、マルケットリー・アンテルカレール 1900-1904年 北澤美術館蔵