第57回 日本コロムビア・三谷順一さんインタビュー【その3】「二葉あき子さんはもっと評価されるべき、藤山一郎さんと同じように国民栄誉賞にあたいする偉大な歌手です」 |AERA dot. (アエラドット)

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第57回 日本コロムビア・三谷順一さんインタビュー【その3】「二葉あき子さんはもっと評価されるべき、藤山一郎さんと同じように国民栄誉賞にあたいする偉大な歌手です」

文・原田和典

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 日本コロムビアのプロモーション・マネージャー、三谷順一さんへのインタビューも今回が最終回。伝説の歌姫たちの歌唱を現代のリスナーにどう伝えるのか? 往年の定番歌謡曲をどう、今の時代にプレゼンテーションしていくのか? 今回も興味深いお話ばかりだ。


 李香蘭(山口淑子)、ごぞんじですか。 

―― 歌手として女優として大変な人気があったということはうかがっておりますが、正直申し上げて「歴史上の人物」という印象を受けます。

『伝説の歌姫 李香蘭の世界』を去年(2015年)発売しました。《夜来香》《紅い睡蓮》《蘇州夜曲》など代表曲、貴重曲を集大成したCD2枚組です。このアルバムに《雲のふるさと》、《月のしづく》という新発見の2曲を収録することができました。「古賀政男音楽博物館」(東京都渋谷区上原)に保管されている古賀政男先生の遺品の中から未発表SP原盤が見つかりました。昭和19年12月のレコーディングで、おそらく戦時中の影響で発売されず、そのまま先生のところに保管されていたんでしょうね。歌謡史上でも重要な発見でNHKや新聞などでも報道されました。李香蘭は戦前戦後の映画トップ・スターで、そして若き日には声楽も勉強された美しいソプラノです。『伝説の歌姫 李香蘭の世界』は、歌手としての李香蘭の素晴らしさを、もっと知ってほしくて発売しました。20代、30代の若い方々まで人気が拡大し、記録的なベストセラーとなっています。一昨年逝去されましたが、二つの祖国を持ち、日中の大スターとなり、国会議員にもなられ、激動の生涯であったと思います。

―― 二葉あき子さんの『伝説の国民的歌手 二葉あき子の世界』も好評であるとうかがいました。

 二葉あき子さんは昨年が生誕100年でした。東京音楽学校(現在の東京芸大)で英才教育を受けた最高の歌手ですね。戦前戦後と活躍されて《夜のプラットホーム》とか《水色のワルツ》といった大ヒットも多数あります。学生の時にデビューされています。そして88歳ぐらいまで現役で歌っておられ多数の名唱が遺されています。このCDにも最後のレコーディングぐらいまで入れました。もっと評価しなければいけない、藤山さんと同じように国民栄誉賞をとるべき方だったと個人的には思っています。96歳でお亡くなりになったんです。去年、郷里の広島に《夜のプラットホーム》の歌碑が立ちました(広島市東区二葉の里)。

―― (CDジャケット裏を見て)《赤とんぼ》、《シューベルトの子守唄》、シャンソンの《パダム パダム》も取り上げています。すごい幅の広さです。

 童謡も唱歌もクラシック歌曲もシャンソンもタンゴも歌謡曲も歌う、すごく安心感のある歌唱力の持ち主です。初期はメゾソプラノだったんですが、昭和30年代ぐらいからアルトに変わって、深い美しい声で。晩年の歌唱を聴いても、これだけ抱擁力のある歌声はないなと思いますね。素晴らしい歌をたくさん歌っておられるなという印象は僕の入社当時からあったんですけど、こんなに素晴らしい歌唱力で、しかもテクニックをひけらかすんじゃなくて、柔らかい声で。最高峰の表現力の持ち主だと思います。

―― 三谷さんは歌謡曲のオムニバスCDも、たくさん手がけておられますね。

 日本コロムビアのアーカイブ作品の、発売と選曲と構成に携わっています。今、お奨めしたいのは『みんな恋した歌謡曲』というシリーズです。「恋愛編」「青春編」「最愛編」「友情編」「初恋編」の5枚が出ています。このシリーズはレコード会社各社の協力を仰いで、《ブルーライト・ヨコハマ》(いしだあゆみ)、《人形の家》(弘田三枝子)、《喝采》(ちあきなおみ)、《夜明けのスキャット》(由紀さおり)など時代を超えて愛唱される昭和歌謡の名曲を厳選しています。そこが若い人には新鮮で、年配の人には懐かしいのでしょうか。おかげさまで好評です。

 たくさん売れるのは嬉しいですよ。今、レコード店が減っていって、県に数箇所しかない、というところもあります。「ネットで買えばいいじゃないか」という意見もあるでしょうけど、現物を見ながら買いたいという層は確実にあります。業界のトータルでは、去年より今年の売り上げの方がむしろ上昇しているので、希望は持っているんですが。演歌、歌謡曲、フォーク、ロック、ジャズ、クラシック、唱歌、叙情歌、シャンソン、ポピュラーなど、ジャケットの感じとかタイトルとかも含めて、喜ばれるものを、これからも出していきたいと思っています。 [次回8/29(月)更新予定]


(更新 2016.7.27 )


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プロフィール

原田 和典(はらだ・かずのり)

 北海道出身。ジャズ誌編集長を経て、現在は音楽、映画、演芸など様々なエンタテインメントに関する話題を新聞、雑誌、CDライナーノーツ、ウェブ他に執筆。著書は『元祖コテコテ・デラックス』『世界最高のジャズ』他多数、共著に『アイドル・ソング・クロニクル2002-2012』等。ブログ「原田和典『ブログ人』」に近況を掲載。twitterアカウントは @KazzHarada

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