ROY HAYNES / Bushman's Holiday (EMARCY)MG26048

 私達は仕事柄12インチサイズのレコードバッグを持ち歩きます。キャスター付きのものもあればトートサイズの肩掛け式など、多岐に渡ります。一方でジャケットの概念がない7インチが多いのはアメリカ。ジュークボックスやハウスパーティ対応なのか7インチ用のブック型やボックス型のケースもヴィンテージとして多数残っていますし、7インチケースに限ってはニッチなアイテムとしてここ日本では一部で密かに人気があり、専門のレディメイドのバッグを現在でも買う事ができます。そういう意味では日本のマーケットというか、レコードファンは頼もしいと言わざるを得ない。

 さて、ここで困るのが10インチの立場。その昔には10インチは重宝され(特にクラシックファンに)、専用のケースなども日本製で作られていたようですが(神保町で売られていたのを見たことがあります)、私が所有しているのは写真2、3枚目のアルゼンチン製のもののみ。栃木県足利市のヴィンテージ・レコードさんから頂戴してしまった。

 ま、それは置いといて。レコードバッグの中身は常にリロードされますが12インチサイズのレコード80枚に対して10インチは3枚程度。仕方ないのでバッグの内ポケットにスリーブごと突っ込みますがどうも据わりが悪い。この10インチ問題はいつ解決するんでしょうか。そんなマイノリティな存在でも例えば現場で必ずプレイするために持ち歩いているのが写真のケース、というわけで。ブルーノートやベツレヘム、UKのテンポの例をあげるまでもなくジャズについては10インチがオリジナルで12インチサイズのLPは後発の編集盤というケースも少なくなく(しかしオリジナル盤至上主義ではない私は正直どちらでも構わないのですが)音質はあきらかに違うような気がします。

 CD化されているこのアルバムは10インチのみのリリースのようです。ロイ・ヘインズ(d)のリーダー作は概してDJに人気であり、それはドラマーならではのリズム設定に尽きると思っている。当時は評価されなかったのかも知れないけれども評価の基準がいくつにも枝分かれしている現在、例えば参加メンバーにサヒブ・シハブ(as.bs)、オキ・ペルソン(tb)の名前を発見すればそれは充分試聴してみる価値はある。そこに加えてロイ・ヘインズ、録音はおそらくアメリカのジャズマンが大量に欧州に渡り、そこから交流が始まった時期に合致します。扱いの面倒な10インチだろうがそれを持って余り有る魅力的なレコードというまた別の価値がそうやって表出します。マンボ調の「Little Leona」がDJ的に白眉ですが4曲共に10インチならではのダイナミズムに溢れた音質で「これぞジャズ!」”ブゥワア~”と飛び出すテナーの迫力やロイ・ヘインズの達者過ぎるフラムやリムタップワーク。MONO盤ならではの奥行き。う~ん、深い世界です。