このところ、シリアスな人間ドラマを描いた作品の視聴者は「録画でじっくり見る」ヘビーなドラマファンに限定され、「リアルタイムで見る」ライトウォッチャーとの相性が悪い。つまり、当作は視聴率を取れるジャンルではないのだが、だからと言って地上波の作品が視聴率狙いの「サクッと見る」一話完結モノばかりになっていいはずがない。BSやWOWOWがますますシリアスな人間ドラマに注力するほか、dTVのR15指定作「裏切りの街」が話題を集め、春にはネットフリックスが「火花」を配信するなど配信サービスも地上波とは真逆の骨太路線を突き進んでいる。このままでは視聴者のイメージが「サクッとなら地上波、じっくりならBS、CS、配信」と二極化しかねないのだ。

 私自身、当作の関係者がひどく落ち込んでいると聞いて、強い違和感を覚えた。やはり視聴率以外の指標が必要だし、ライトウォッチャーを取り込むPRに本腰を入れるべきなのは明白だ。ただ、「ここ数年、どの枠よりも骨太な人間ドラマに挑んできた『金曜ドラマ』を応援したい」と思っている視聴者は、関係者が思っているよりもずっと多い。当作は「応援しながら見る」のが正解のような気がする。

●きむら・たかし いまだ「視聴率が正義」という自己視点から抜け出せない業界人が多いなか、強烈なカウンターを放つ当作は、地上波にとって希望の光。この原稿は5話終了時に執筆していますが、少しでも視聴者が増えますように。