書評『そこに工場があるかぎり』小川洋子著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

そこに工場があるかぎり 小川洋子著

平山瑞穂書評#話題の新刊#読書

 作家の目を通した工場見学エッセイ。少女時代、近所の鉄工所に魅了され、作業の様子を飽かず眺めていたという著者ならではの工場愛に溢れている。

 探訪の対象も、金属に穴を開ける作業専門の工場、江崎グリコのお菓子工場、日本唯一の競漕艇メーカー、ベビーカー等の運搬車メーカー、手作業によるガラス製品工場などマニアックな布陣。ニッチを見いだし、ストイックに製品を生み出していくものづくりの現場が生き生きと描かれている。保育士などが複数の幼児を公園などに連れていく「サンポカー」はいかにして生まれたか、一見、単純な構造に見える鉛筆が、いかに手の込んだ工程を経てできあがっているかなど、トリビアも満載だ。

 人と機械との協働が、熟練を仲立ちとして境目の見えない「融合」の域まで達しているありさまに、熱い目が注がれる。(平山瑞穂)

週刊朝日  2021年3月12日号


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