書評『ニッポンの違和感』松尾貴史 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《今週の名言奇言 (週刊朝日)》

ニッポンの違和感 松尾貴史

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斎藤美奈子書評#今週の名言奇言

私が懸念するのは、鍋奉行ならぬ「鍋家来」だ。

<現政権になって、その傾向が強くなったと言われる「行政」と「司法」と「立法」の「3密」を一日も早く解消して、本物の三権分立をしてほしい>

 ほんとだよ。松尾貴史『ニッポンの違和感』は毎日新聞日曜版の連載コラム「松尾貴史のちょっと違和感」の2017年~20年前半分をまとめた本。主な話題は政府のコロナ対策や、安倍政権下で起きた理不尽な出来事に対する「違和感」だ。

<都知事が「夜の街」ばかりを標的にし続けているのは、彼女が1回目の都知事選で掲げ、何の解決もできず、やろうともしていない公約「満員電車ゼロ」を忘れさせるためではないのか>(20年7月)

<菅義偉官房長官は、不要不急の外出や式典の自粛を要請していたのに、自身は大勢を引き連れ沖縄を訪問>。那覇空港の第2滑走路供用開始式典で祝辞を述べ、会合に出席し、マスクなしで会話や握手をした。<自分は例外なのか。もしくは、沖縄は例外なのか>(20年4月)

 一見些細なイチャモンだけど、些細なイチャモンこそが重要なのよね。「ちょっと違和感」がスタートしたのは12年。1年遅れで別の新聞で週1コラムを書きはじめた私は、毎週時事ネタを拾うのがどれほど大変な仕事か身にしみている(なので本誌連載陣も尊敬してます)。

 ただ、本当におもしろいのはその人にしか書けない話題だ。

<酒をつぎ合う風習が、どうにも煩わしい>。意味もなく「まあまあまあまあ」ととっくりを差し向けてくる人は苦手。鍋も同じ。<私が懸念するのは、鍋奉行ならぬ「鍋家来」だ>。頼まれたわけでもないのに勝手に具材を取り分ける。これぞ身近な忖度行為。<だから、私は親切に鍋を取り分けようという人が現れたら、「やめてください」とやや声を荒らげて言うことにしている>(19年11月)

 今般、宴会での鍋は減ったかもしれないが、むちゃむちゃ賛同。大きな忖度は小さな忖度の集積から生まれるのである。

週刊朝日  2020年11月13日号


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