晴れた秋の夜、双眼鏡で空をのぞくと、肉眼では見えなかった星がたくさんあらわれる。夜空は星でいっぱいだ。空は舞台の背景のような平面に見えるけれども、もちろん奥行きがある。地球に近い星もあれば、遠い星もある。いちばん遠い星のさらに向こうはどうなっているのだろう。

 戸谷友則『宇宙の「果て」になにがあるのか』は、この素朴な疑問に答える本である。
「最新天文学が描く、時間と空間の終わり」という副題に要注意。宇宙の「果て」は、空間的なものだけではない。それは過去・現在・未来という時間の「果て」でもある。なぜなら、われわれの世界は上下・左右・前後の三次元に時間が加わった四次元であり、時間と空間は一体のものだからである。

 アインシュタインの一般相対性理論の登場以来、科学者たちは宇宙がどうなっているかをいろいろと考え、仮説を立ててきた。なかでも有名なのがビッグバン説。はじめに大爆発があり、そのときから宇宙は膨張し続けているという説である。

 本書を読んで感心するのは、こうした説はもはや仮説ではないということ。ここ数十年、とくに21世紀に入ってから、天文学上の新しい発見や観察があって、仮説を裏づける証拠が次々と出てきたのだ。天体望遠鏡はじめ測定する機器の性能が飛躍的に進歩した結果だ。岐阜県にあるスーパーカミオカンデもそのひとつ。

 宇宙は138億年前にはじまり、464億光年の半径をもつ球状のものらしい。その向こう側はどうなっているのか。そもそも「宇宙」は「この宇宙」だけなのか。まるで哲学のような話。「果て」をめぐる謎に果てはない。

週刊朝日  2018年9月21日号