書評『「謎」の進学校麻布の教え』神田憲行著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《新書の小径 (週刊朝日)》

「謎」の進学校麻布の教え 神田憲行著

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青木るえか書評#新書の小径

デキる学校の余裕

 麻布高校といえば、高校野球の東京大会で、相手チームに「落ちこぼれ」「悔しかったら東大入ってみろ」と野次ったことで有名である。麻布、開成、武蔵といえば「有名男子進学校御三家」で、中でも麻布は何しろ立地条件がいいし、あか抜けてるような印象もある。今さらなんの謎の解明なのか、と思って読んでみたところ、たいした謎はなかった。「麻布とはどういう学校か」ということを、在校生、教師、卒業生などにつっこんで聞いた、というものだった。有名人では与謝野馨、山下洋輔、橋本大二郎、中条省平らが登場している。
 文化祭が面白いらしい。そういえば開成は運動会がすごいとか言ってた気がする。そのへんが校風の差か。麻布の文化祭は、学校創設以来、大切にしてきている「自主・自立」の精神の象徴なのらしい。ノンフィクションライターの著者がインタビューした文化祭実行委員長のA君も、会計局長のB君も髪を染めている。服装も自由、髪の毛も染めてオッケーなのだ。運営は当日の仕切りのみならず、予算管理まで、生徒がする。Tシャツなど文化祭グッズを売って、毎年黒字なのだという。
 基本的に「デキる学校の余裕」がぷんぷんに感じられる。校則もない、大学進学にも拘らない、と言われても。そうまで言うなら大学進学禁止、とかまでやってくれよと言いたくなるが、きっと「いや、進学がいいとか悪いとかではなく、あくまでも生徒の自主性に任せ」とか答えるんだろうなあ。それでも、こういう層から良心的なリベラルな人も出てくるだろうからガマンしなくてはならないとも思うものです。
 でも、それと同時に、学校時代なんて、どんな教育を受けてようが「その時代を懐かしむ」ような人間はロクなもんじゃないと思う。学校なんて「思い出したくない時間」になるのだから、やっぱり注意深く学校を選んだほうがいい。この本はそのためにも読んでおくべきかもしれない。

週刊朝日 2014年12月12日号


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