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鼓動のうた 愛と命の名歌集
話題の新刊
2014/07/09 21:18
近代、現代をおりまぜた300首あまりの愛、あるいは命を詠んだ短歌を歌人が紹介。作者の職業や詠われた背景などをふまえ、1首ずつこまやかに読み解いていく。
夏の恋を詠んだ有名な歌がある。「あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ」(小野茂樹)。読者それぞれが胸の内に秘める、かけがえのない相手の表情が浮かぶ。そうした選歌の妙は今を生きる歌人の作品にも及ぶ。「よく笑ふ親の子供はよく笑ふなんでもなくてしあはせなこと」(大松達知)。親が意識的に心を配ることでようやく実現するのが日常。著者の筆に共感が湧く。
「『よく生きた』生きてただけで誉められる六百三人登校した日」(岩尾淳子)。阪神大震災を詠んだ命の歌。「おとうさんわたしはこんなに空腹でさくら食べたよつめたいさくら」(小島ゆかり)。認知症の父親を見舞い、かつての父と幼かった自分とが呼びかけの中でからみあう歌。愛と死、命には最も深い感情の吐露が伴う。最後に著者の歌を。「同じように髪を束ねた母と子のサランサランとゆく春の風」。永遠の春が揺れる。
※週刊朝日 2014年7月18日号
鼓動のうた 愛と命の名歌集
東直子著


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