書評『平安人の心で「源氏物語」を読む』山本淳子著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

平安人の心で「源氏物語」を読む 山本淳子著

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西條博子書評#話題の新刊

『源氏物語』の研究者が、五十四帖のあらすじを紹介しつつ、執筆された平安時代の社会背景をさまざまな角度から解き明かす。
 紫式部が物語を書き始める直前、時の一条天皇に低い身分ながら寵愛された中宮定子がいた。式部はヒロインの桐壺更衣に、実在の妃・定子を重ね合わせたのではないか。定子の存在こそが物語の原点だと著者はいう。
 定子は世の中に絶望して出家するも天皇に復縁させられ後宮にもどる。しかし、最高権力者である藤原道長から陰湿ないじめを受け、天皇の第三子を出産した直後、若くして亡くなる。この定子と式部は、母親が受領階級という同じ身分の出身だった。天皇の血を引くものの、母親の家柄が低いため東宮や親王への道を閉ざされ臣下に降った光源氏や、政争に負けて没落した明石一族など、式部は身分社会の敗者を温かく描いた。
 ほかにも、神に仕える未婚の皇女である斎王は、伊勢神宮のほうは哀切、上賀茂・下鴨神社のほうは典雅というイメージが当時からあり、物語に生かされていることなど、古典への興味が深まる。

週刊朝日 2014年7月11日号


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