ヤンキー経済

今週の名言奇言

2014/03/26 16:56

「ヤンキー」はきわめて定義のしにくい概念(実存?)である。が、「ヤンキー感覚」は日本文化の根幹にかかわるのではないかという指摘はすでにされていて(斎藤環『世界が土曜の夜の夢なら』、難波功士『ヤンキー進化論』など)、この件には私は少なからぬ関心を抱いてきた。
 原田曜平『ヤンキー経済』はそんなヤンキーの生態にマーケティングの観点からスポットを当てた本。ツッパリやチーマーなど「不良」のイメージが強かったかつてのヤンキーとはちがい、フレンドリーで反抗心の薄い今様ヤンキーを、著者は「マイルドヤンキー」と名づける。
 マイルドヤンキーは地元(5キロ四方の小中学校の学区程度の範囲)が好き。都会は<人が多くて面倒な場>なので東京への憧れは一切ない。他人と乗り合わせる電車も大嫌いだから、片道わずか20分圏内にある新宿や渋谷も敬遠する。彼らにとって何より重要なのは、いつメン(いつものメンバー)で集まり、地元のファミレスや居酒屋やカラオケでだらだらすごすことなのだ。
 かくて都下(西多摩郡日の出町)に住むあるヤンキー夫婦はいうのである。<日の出の若者にとって、イオンは夢の国。イオンに行けば、何でもできるんです>。な、なるほどなあ。家から2~3キロの距離にあり、無印良品も百均もスタバもマックもTSUTAYAも家電量販店もある大型ショッピングモールが彼らにとってはハレの場所なんだ。
 好きな車は<大人数が快適に乗車することのできるミニバン>。将来の希望は〈地元で結婚し、家庭を築き、地元友達の家族同士、子供同士で平穏な生活を営むこと〉。
 地縁を何より重んじ「いつメン」ですべてがまかなえる人生。明治以来、上昇志向を煽ることで築き上げた「近代」は完全についえたのである。そんな新保守層こそが新しい消費の主体だと博報堂に勤務する著者はいうのだが、提示された商品の例がショボいんだ。致し方あるまい。あっちはイオンの夢だからな。

週刊朝日 2014年4月4日号

ヤンキー経済

原田曜平著

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ヤンキー経済

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