書評『タイガの帝王 アムールトラを追う』福田俊司著 |AERA dot. (アエラドット)
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《話題の新刊 (週刊朝日)》

タイガの帝王 アムールトラを追う 福田俊司著

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谷本束#話題の新刊

 ロシア極東部に300余頭しか生息しないアムールトラは警戒心が強く、めったに人前に現れない。地元の猟師すらほとんど見たことがない“幻のトラ”をカメラでとらえようと、厳寒のシベリアに飛び込んだ命がけの記録。
 タイガ(シベリアの密林)にはトラのほか、ヒョウなどの猛獣が徘徊し、冬はマイナス数十度になる。油断すれば即、命を落とす極限状況で狩人のごとく森の痕跡を読み、ターゲットの動きを予測しながらひたすら待つ。トラと人、追跡の駆け引きにぞくぞくする。
 ホッキョクグマに襲われ、九死に一生を得たエピソードも紹介している。著者ほど自然と動物を熟知している人でも、死は簡単に目の前にやって来る。自然とは本来、凶暴なものなのだということを身震いとともに思い知るのだ。一方で、著者が撮影したトラのなんと猛々しく美しいこと。シカやイノシシ、たくさんの野鳥、蝶などもカメラに収めているが、命溢れる森の放つ輝きに思わず言葉を失う。
 後半は、20世紀初頭にアムールトラを追い続けた名ハンター、ヤンコフスキーの手記「トラ狩りの半世紀」を収録。

週刊朝日 2013年9月6日号


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